■アンジェス<4563>の主要開発パイプラインの動向
3. ARDS治療薬(Tie2受容体アゴニスト化合物)
Vasomuneとの共同開発品であるARDS治療薬「AV-001」(Tie2受容体アゴニスト)※は、2018年より全世界を対象に急性呼吸不全など血管の不全を原因とする疾患の治療薬として共同開発を進めてきた。中等度から重度の新型コロナウイルス感染症肺炎患者向けの治療薬としても効果があると見て、2022年1月より米国で前期第2相臨床試験を実施してきたが同感染症が収束したこともあり、現在は対象疾患をインフルエンザ等のウイルス性及び細菌性肺炎を含むARDSに拡大し(FDA承認済み)、臨床試験を進めている。
※ 同社は2018年にVasomuneと、急性呼吸不全など血管の不全を原因とする疾患を対象とした「AV-001」の全世界を対象とした共同開発契約を締結した。開発費用と将来の収益を折半し、また、同社がVasomuneに対して契約一時金及び開発の進捗に応じたマイルストーンを支払う契約となっている。ARDSの患者数は米国だけで26万人いる。
2025年12月時点で当初予定の60例の登録は完了したが、脱落症例に対応する追加の登録を実施しており、2026年12月期第3四半期にすべての登録が完了する見込みだ。トップラインデータは2026年内にも発表できる見通しで、良好な結果が得られればライセンスアウトする意向だ。「AV-001」は2024年5月にFDAからファスト・トラック※に指定されており、臨床試験に関する協議や審査などの手続きを迅速に進めることが可能である。
※ 重篤な疾患に対する新たな治療法やアンメット・メディカル・ニーズを満たす可能性のある薬剤などの開発を促進し、迅速に審査することを目的に制定された制度。
また、「AV-001」は血液透析患者における急性虚血性脳損傷の予防を目的とした医師主導臨床試験が新たに始まり、2026年3月に最初の被験者への投与が開始された。同研究はカナダ心臓・脳卒中財団の助成を受けて実施され、血液透析によって引き起こされる細胞毒性脳浮腫を軽減し、認知機能の低下を抑制し、脳白質機能を維持できるかを評価する試験である。予定症例数は60例で2027年内の登録完了が見込まれている。末期腎不全患者の最大90%が血液透析を利用しているが、特に55歳以上の患者の約70%において細胞毒性脳浮腫が発現し、中等度から重度の認知障害を引き起こすなど医療現場において大きな課題となっている。「AV-001」はTie2/Angiopoietin-1シグナル伝達経路を標的として血管を安定化させ、血管漏出や炎症を抑制することで細胞毒性脳浮腫を軽減し、血液透析患者の脳の機能を守る新たな治療法となる可能性がある。
今回の医師主導治験の開始に伴い、同社はVasomuneと「AV-001」の共同開発契約の対象範囲をすべての適応疾患とする契約を、2025年11月に締結した。同契約に基づき、2026年から2027年にかけて3百万米ドルを支払うことになるが、導出が決定した場合や上市に成功した場合には、同社もその対価の一部を得られることになる。
さらに、戦闘などで傷害を受けた重度熱傷患者の蘇生治療に向けた開発についても検討を進めている。「AV-001」の投与により、血管内皮細胞表面に高発現する膜貫通型タンパク質 Tie2 受容体を活性化し、血管漏出の抑制と血管内皮バリア機能の維持を図り、蘇生治療に役立てることを目指す。米国防省からの助成金を活用して開発を進める意向で、現在プロトコルの見直し作業を進めており、準備が整い次第、第2相臨床試験を開始する。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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