■ポールトゥウィンホールディングス<3657>の今後の見通し
3. 企業価値向上に向けた経営方針
同社は2023年1月期以降、業績の悪化を受けて成長基盤を再構築すべく事業再編に取り組んできた。こうした取り組みは2026年1月期で一巡し、2027年1月期以降の業績は再成長ステージに入る見通しである。弊社では、中間期業績が想定を上回るペースで回復したことにより、その蓋然性は高まったと見ている。今後は注力領域に集中投資を行い収益の再成長を図るとともに、成長の源泉となる人的資本への継続投資や財務の健全化、株主還元等を進めることで、企業価値の向上を目指す。
(1)事業成長
事業成長に向けては、生産性及び収益性の回復を最優先課題として取り組む。生産性の回復に向けては、ゲーム分野における単価交渉を継続するほか、Tech分野の拡販並びに高単価案件の獲得に注力する。また、AI技術の活用によって、創業以来継続してきた「システムとヒト」の両輪を発展させていく。収益性の回復に向けては、組織のスリム化によって市場環境の変化に柔軟に対応できる体制を構築するほか、海外拠点の最適化を推進することで海外ソリューションの収益力を回復させる。
AI技術の進歩によりモニタリングなど一部業務の代替が進みつつあるが、同社では「システムとヒト」によるソリューションサービスの一段の高品質化を追求することで差別化を図り、収益性の向上と事業拡大につなげる。具体的には、単純なバグの発見や自動翻訳などの業務にはAI技術を活用し、AIが苦手とする複雑なバグへの対応や自動翻訳の最終調整などはヒトが担うことで、生産性・収益性を高めていく。前述したデバッグ業務へのAIツールの活用もその一例となる。Tech分野やCX分野においても有力な支援ツールを持つ企業とアライアンスを組むことで、高付加価値型のソリューションサービスを提供し、収益向上を目指す。
国内ソリューションでは、安定収益基盤であるゲーム分野で高品質なサービスを強みにシェアを着実に高めるとともに、ゲームデバッグで培った強みが特に生きる領域(FinTech、FoodTech)に注力し、Tech分野で2ケタ成長を目指す。FoodTech分野では主に外食産業の顧客を想定ユーザーとし、自動券売機やタブレット端末を利用した注文、配膳や電話対応の自動化等、人手不足を背景にDX・BPOが急速に進む領域で、誰でも操作しやすい環境を構築する案件等の獲得に注力する。FinTech分野では、キャッシュレス決済や暗号資産、ネット証券、ネット保険の口座開設手続き等において、多様な不正対策やアプリの利便性向上につながる案件の獲得を推進する。CX分野では主要顧客である大手EC事業者との取引を継続するとともに、サイバーセキュリティソリューションの提供を通じて新規顧客の開拓を進める。その一環として、2026年2月にAI技術を活用したSOCサービス※の提供を開始した。
※SOC(Security Operations Center)サービスは、SynXが提供するITトータルソリューションサービス「SynXOne」の運用フェーズの中核機能に位置付けられ、24時間365日体制で企業のITインフラのセキュリティ監視、インシデントの検知、初動対応等を行うサービスである。
海外ソリューションでは、ゲーム市場が年率8%で拡大を続けるなか、高成長が期待できる領域(eスポーツ、VR・AR等)や地域(中東、北アフリカ)に積極的に展開し、中期的に年率2ケタの成長を目指す。また、新たな参入検討領域として、ゲーム以外のソフトウェアテスト市場への参入に向けた調査を進めている。
(2)人的資本投資
成長の源泉となる人材への投資を継続する。人的資本を最大化するための施策として、オフィス環境の向上や働き方の構築を推進するほか、非正規雇用者の正社員化を含めた多様な人材の確保・活躍推進、次世代幹部候補の採用・育成にも注力する。特に今後は、AIエンジニアに加え、Tech分野でソフトウェアテストやDX支援ソリューションを展開するうえで必要となるコンサルタントの増員を進めていく。
(3)財務健全性
同社は、ここ数年で悪化した財務の健全性の回復にも取り組む。2025年まで積極的なM&Aにより売上規模の拡大を図ってきたが、過去のM&Aに関わる減損処理の経験も踏まえ、投資と事業撤退の規律を策定する。当面は既存事業の成長投資と株主還元に資金を重点的に配分し、機動的なアロケーション(M&A、自己株式取得等)のための資金余力を残しつつ、自己資本比率を50%水準まで引き上げる方針である。
■株主還元策
総還元性向30%以上が目標、株主基盤拡充に向けた施策の進展に注目
同社は株主還元策として配当を実施しており、上場以来、累進配当(配当の維持または増配)を継続している。2025年1月期からは配当方針の目安として「DOE3%下限」「総還元性向30%以上」を掲げ、将来的な株主還元の拡充に取り組む方針を示した。DOEに下限を設けることで各期の利益の影響を受けない安定的な配当を確保しつつ、利益成長に連動した配当成長を実現する考えである。同方針に基づき、2027年1月期の1株当たり配当金は前期と同額の16.0円(総還元性向80.8%、DOE6.7%)を予定している。また、自己株式の取得についても株価水準によって適宜検討する。
なお、同社は2026年1月末時点の流通株式時価総額が72.56億円とプライム市場の上場維持基準(100億円以上)を満たしておらず、改善期間に入っている。流通株式数が2026年1月末と同水準と仮定すると、基準への適合には株価上昇または流通株式数の増加等による改善が必要な状況にある。また、2026年9月29日には、主要株主であったオービス・インベストメント・マネジメント・リミテッドの議決権所有割合が11.49%から9.83%に低下し、同年9月15日付で主要株主に該当しなくなったことが公表された。スタンダード市場へ移行する選択肢もあるが、業績が回復基調に入っており上場維持基準に適合する可能性もあることから、同社はプライム市場の維持を最優先に検討を進めていく方針である。具体的には、2027年1月期の業績計画を達成して収益が再成長期に入ったことを訴求していくことに加え、個人投資家の関心が高い株主優待制度の導入や、株価に影響を与えない範囲で大株主の保有比率を引き下げるなどの施策を実施することで、個人投資家層の拡大や流通株式比率の向上を図ることが考えられる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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