■中長期の成長戦略
1. 中期経営計画の概要と戦略
泉州電業<9824>は、前回の中期経営計画を2年前倒しで達成したため、新たに2027年10月期を最終年度とする「中期経営計画:SS2027」を2024年12月に発表した。現時点において、この計画の目標や戦略に変更はない。以下はその概要である。
(1) 定量的目標
定量的目標としては、2027年10月期に連結売上高1,600億円、経常利益130億円、ROE15%以上、配当性向35%以上、株主総還元率50%以上、PBR2.0倍以上を掲げている。収益力のさらなる向上に加えて、株主還元の充実においても目標設定している点は評価に値するだろう。
(2) 市場環境・予測
この計画を推進するにあたり、同社では主な向け先市場の今後の動向を次のように予測している。
a) 半導体関連
進行期(2026年10月期)は、AI関連需要が市場を牽引、2027年10月期に向けて需要はさらに継続する。
b) 工作機械関連
足元では更新需要中心に回復傾向。2027年10月期には更新需要がさらに底堅く推移する見込み。
c) 自動車関連
進行期では、EV需要は一服だがHEV需要が生産を下支え。2027年10月期にはHEV需要が継続し、高機能部品需要も拡大する見込み。
d) 再生可能エネルギー関連
進行期は電力需要増加により、蓄電池を含めて追い風。2027年10月期は電力需要増加により蓄電池含め需要が継続すると予想。
e) 建設関連
進行期は、建設コスト上昇、人手不足による工期延期が続く。2027年10月期は大型半導体工場、データセンター建設が進む一方で、工期延期も続く見込み。
f) 銅価格
進行期は乱高下しながら高値で推移し、今後は緩やかな上昇が続くと見ている。
(3) 事業戦略
計画の推進にあたり、以下の施策を実行する。
a) オリジナル商品開発及び加工部門強化
b) 自社ブランド含む非電線商品の開発及び拡販、新分野の開拓
c) 関東地区営業強化及びその他地区のシェア拡大
この3つの施策により、2027年10月期には直需売上シェア30%(2026年10月期中間期26%)、非電線売上シェア17%(同12%)を目指す。
d) JUST IN TIME体制の充実
e) グローバル展開の強化(グループ収益向上)
インドへの進出を検討。グローバル長期目標として連結海外売上高比率30%を目指す。
f) サステナビリティ経営
ESGの重点課題に対する取り組みを推進する。
g) 泉州変革プロジェクト(仕入れ・物流、人事、商品開発、DX推進)
(4) 財務戦略
財務戦略として、「営業活動により創出するキャッシュより財務健全性を確保し、投資と株主還元に配分する」ことを基本方針としている。
2025年10月期から2027年10月期までの3年間の財務戦略(キャッシュインとアウト)を次のとおり計画している。
(キャッシュイン:530億円)
営業キャッシュ・フロー:230億円
手元預金:300億円
(キャッシュアウト:530億円)
事業投資:130億円(うち設備投資100億円、M&Aほか30億円)
株主還元(50%):120億円(うち配当金90億円、自己株式取得30億円)
手元預金:280億円(月商2ヶ月分)
(5) 設備投資計画
本計画の3年間で、100億円の設備投資を予定している。現時点で明らかになっているものは以下のとおりだが、今後新たな追加投資の予定もあるとしている。
2025年10月期:名古屋FAセンター(2025年4月開設、ケーブルアッセンブリー、制御盤組み立て等)
2026年10月期以降:沖縄営業所(仮称)(業容拡大のため現在の沖縄物流センターを格上げ、拡大)
(6) 新分野開拓(アグリ事業)
新分野開拓の一環として、自社開発品である「アビルヒーター」の改良・廉価版となる「ソイルヒーター」を上市した。これは農業用地中加温ビニール線で、ビニールハウスなどの土壌を直接温めることでCO2排出量の削減に寄与し、生育スピードを早めることで収穫回転率を上げることができる。燃料を使用するボイラーに代わり、ビニールハウス内を温めることから脱炭素、省エネ製品としてSDGsに貢献する。同社では、「アビルヒーター/ソイルヒーター」を含むアグリ事業で2027年までに年間売上高10億円を目標に掲げており、今後の進展が注目される。
「資本コストを意識した経営」を取締役会で決議
2. 資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応
同社では、資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応について改めて現状分析を行い、今後の取り組みを取締役会で決議した。以下がその概要である。
(1) 目標値に対する現状評価
(2) 今後の取り組み
1) 収益力のさらなる向上(ROE)
収益の向上を目指して下記の事項に取り組み、企業価値の向上を図る。
a) 同社グループの存在意義(パーパス)を改めて認識し、事業活動を行う。
同社グループパーパス:「社会に必要な重要なインフラ製品を責任を持って供給する」
b) 人員の確保、人材の育成に経営資源を投入し社員のさらなる成長を図る。
c) 多彩なユーザーニーズに応えるため、事業所の拡充を進める。
d) 事業の拡充を図るためM&Aなどを活用する。
e) DXを推進し経営の効率化を図る。
2) 株主還元の充実(配当性向、株主総還元率)
株主への利益還元は重要な経営課題としており、安定的な配当を維持することを基本方針とし、業績、内部留保などを総合的に判断し株主還元の充実に努める。
3) IR(投資家)、SR(株主)活動の強化(PBR)
同社に投資したい人を増加させるため積極的なIR活動を行う。また、既存株主には株主還元をしっかり行い、長く保有してもらうため、SR活動にも注力する。
4) 役職員の株価意識向上(PBR)
役職員がより株価を意識した経営を行うため、取締役及び従業員に対しストック・オプション(新株予約権)を発行し、取締役に対しては報酬の一部を譲渡制限付株式で付与している。また、従業員に対し従業員持株会へ譲渡制限付株式も発行済み。
3. サステナビリティ経営
同社では、経営理念として「新しい価値を創造して能力を発揮し社業の発展に努め社会に貢献するとともに株主に報い社員の福利厚生を図る」を掲げている。これに基づき、「企業価値向上」のために「ESG経営」と「サステナビリティ経営」を推進する方針だ。
E:環境保全活動
マテリアリティ(重要課題)として、「CO2排出量削減」「気候変動への対応」「環境法規制の遵守」を挙げている。具体的な取り組みとして、2021年12月に気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)提言に賛同し、同提言に基づく「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標と目標」の4分野での情報開示を行っている。また、中期目標として「CO2の排出量を2030年度までに2013年度比50%削減」、長期目標として「2050年度カーボンニュートラル」を掲げている。このほか、2026年3月には「2025環境報告書」を発刊した。
S:人権の尊重と配慮/働きがいのある職場環境の整備/安定的な商品供給とサービスの供給
マテリアリティとして、「情報セキュリティ強化」「品質管理体制の強化」「取引先・従業員とのエンゲージメント向上」「健康経営の推進」「安全衛生の充実」「ダイバーシティの推進」「福利厚生の充実」を挙げている。成果としては、ダイバーシティの推進で2026年に女性活躍推進法に基づく「一般事業主行動計画」を策定。また、「健康経営優良法人2026」に認定されている。
G:ガバナンスの強化
マテリアリティとして、「コーポレート・ガバナンスの充実」「コンプライアンスの徹底」「リスク管理」を挙げている。具体的な取り組みとして、2026年1月30日に「コーポレート・ガバナンスに関する報告書」を開示した。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 寺島 昇)
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