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株価下落「三菱重工」今が買い?長期投資家が見るべき“防衛だけじゃない”強さと投資リスク=栫井駿介

三菱重工業<7011>の株価が調整局面を迎えています。一時は防衛関連株への期待を背景に大きく上昇しましたが、足元ではIHIや川崎重工業とともに株価が下落しています。三菱重工業の株価は2~3月ごろに5,000円を超えていたものの、7月24日時点では3,958円と4,000円を割り込み、ピークからおよそ2割下落しました。この下落は、防衛株ブームの終わりを意味するのでしょうか。それとも、長期投資家にとって買い場が近づいているのでしょうか。

三菱重工業を分析するうえで重要なのは、同社を単なる「防衛関連銘柄」として見ないことです。防衛事業には一服感が見え始めている一方、ガスタービンや原子力を中心とするエナジー事業には、世界的な電力需要の増加という大きな追い風があります。

今回は、防衛需要の今後、AIデータセンターとガスタービンの関係、原子力事業の可能性、巨額の受注残に潜むリスク、そして現在の株価を考える際のポイントを詳しく解説します。(『 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 』栫井駿介)

プロフィール:栫井駿介(かこいしゅんすけ)
株式投資アドバイザー、証券アナリスト。1986年、鹿児島県生まれ。県立鶴丸高校、東京大学経済学部卒業。大手証券会社にて投資銀行業務に従事した後、2016年に独立しつばめ投資顧問設立。2011年、証券アナリスト第2次レベル試験合格。2015年、大前研一氏が主宰するBOND-BBTプログラムにてMBA取得。

三菱重工業は日本の重工業を代表する企業

三菱重工業は、日本の重工業を長年にわたって支えてきた代表的な企業です。

事業領域は幅広く、防衛分野ではミサイルや戦闘機などを防衛省・自衛隊向けに供給しています。
エネルギー分野では、発電所向けの大型ガスタービンや原子力関連設備を手掛けています。

日常生活で目にする製品を大量に販売する企業とは異なり、三菱重工業が扱うのは、国家や社会のインフラを支える大規模かつ高度な設備が中心です。
技術力だけでなく、長期にわたる開発、製造、保守・運用の能力が求められるため、簡単に新規参入できる分野ではありません。

この高い参入障壁が同社の強みである一方、大型プロジェクトならではの難しさも抱えています。

三菱重工業<7011> 週足(SBI証券提供)

三菱重工業<7011> 週足(SBI証券提供)

防衛関連株が大きく上昇した背景

三菱重工業、IHI、川崎重工業などの防衛関連株が大きく上昇した背景には、日本政府による防衛費の増額があります。

政府は2023年度から2027年度までの5年間で、合計43兆円程度を防衛力整備に投じる方針を掲げました。
それ以前の日本の防衛関係費は、長く年間5兆円前後に抑えられていましたが、現在では9兆円規模にまで拡大しています。
わずか数年で、単年度の予算が従来の2倍近い水準に達したことになります。

この政策転換の背景には、ロシアによるウクライナ侵攻をはじめとする国際情勢の緊迫化があります。
日本はロシア、中国、北朝鮮などに近く、安全保障環境の変化を無視できません。

また、米国から日本に対して防衛負担の拡大を求める声が続いていることや、国内にも防衛力強化を推進する動きがあることから、防衛費の増額は一時的な思惑にとどまらず、具体的な政策として実行されてきました。

こうした環境下で、防衛装備品を供給できる企業への業績期待が高まり、三菱重工業をはじめとする防衛関連株の株価が上昇したのです。

防衛需要は「永続的な右肩上がり」とは限らない

防衛費が増加していると聞くと、関連企業の業績も今後ずっと右肩上がりになるように思えます。
しかし、ここでは予算の中身を冷静に見る必要があります。

2023年度から2027年度までの5年間は、防衛力を集中的に整備する期間と位置付けられています。
これまで不足していた部品をまとめて取得し、航空機、ミサイル、施設などの装備を集中的に整える計画です。

一方、いったん大型装備を導入すれば、その後も同じペースで買い続けるわけではありません。
導入した装備の維持・整備、運用、人員確保などに予算を振り向ける必要が生じます。
装備品の種類によっては、次の5年間には新たな取得が不要になるものもあります。

つまり、防衛予算全体が高い水準を維持するとしても、そのすべてが新規の大型装備品の購入に使われ続けるとは限りません。
設備を集中的に導入する段階から、導入済みの設備を維持・運用する段階へ移れば、重工各社に入る新規受注の伸びは鈍化する可能性があります。

実際、三菱重工業の防衛・宇宙部門では、新たに獲得した契約額を示す受注高が減少傾向にあります。

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出典:三菱重工業 決算説明資料

売上高は過去に獲得した受注を順次消化することで計上されるため、直ちに業績が悪化するとは限りません。
しかし、新規受注の勢いが落ち着けば、株式市場が織り込んできた高い成長期待も修正されやすくなります。

足元で三菱重工業だけでなく、IHIや川崎重工業の株価もそろって下落しているのは、業績が突然悪化したからというより、防衛需要に対する期待を先行して織り込みすぎた反動と、防衛向け新規受注のピークアウトを意識した動きの両方があると考えられます。

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