fbpx

マクセル、世界が注目する全固体電池を含む高信頼の小型電池領域においてグローバルNo.1をめざす

マネーボイス 必読の記事

2026年8月29日にログミーFinance主催で行われた、第140回 個人投資家向けIRセミナーの第3部・マクセル株式会社の講演の内容を書き起こしでお伝えします。

コーポレートバイライン「Micro batteries. Maximum impact.」ムービーをご覧ください

中村啓次氏(以下、中村):マクセル株式会社代表取締役 取締役社長の中村です。本日はよろしくお願いします。資料のご説明に入る前に、動画をご用意していますのでご覧ください。

INDEX

中村:それでは、スライドの内容についてご説明します。

社名の由来

中村:基本情報を共有します。まず、会社紹介です。40代後半以上の方々には当社の製品や会社になじみのある方が多いかと思いますが、若い世代の方々にはなじみが薄いところもあると思います。そのため、社名の由来や設立経緯も含めてご紹介したいと思います。

マクセルという社名は「Maximum capacity dry cell」に由来します。「Maximum」は最高性能を、「capacity」は容量を、「dry cell」は乾電池をそれぞれ指しており、これらの意味合いを込めて創業した会社です。

創業は1961年と、かなり以前にさかのぼります。当時は戦後復興期で技術革新が進み、それまでケーブルでつながっていた電子機器が電池駆動で使用できるようになった時代です。

例えば、電気カミソリ、携帯ラジオ、懐中電灯などの機器が電池で動作するようになり、そのような生活の革新は使用する電池によって決まるという背景がありました。そのため、非常に技術競争が激しい製品の立ち上がる時期でした。

変わるマクセル

中村:その後、当社は乾電池に加え、カセットテープやビデオテープ、そして私の学生時代には研究室でフロッピーディスクを使用していたのですが、そのような音楽、映像、データといったものを記録する製品を中心に事業展開を図ってきました。どちらかというと、BtoC領域を中心とした会社として成長を遂げてきました。

一方、それまでは日立マクセルという日立製作所の子会社でしたが、2014年に自主自立で再上場して以降、BtoCからBtoBへと軸足を移す取り組みを進めてきました。

例えば、同じバッテリーではありますが、スライドに掲載している耐熱タイプのコイン形リチウム電池は自動車のパンクセンサに使用されています。また、円筒形リチウム電池は社会インフラ用途、具体的には電気・ガス・水道のスマートメーターなどに使われています。現在は、このような電池を中心に成長しています。

テープについては、カセットテープから建築・建材用の高耐久性テープへと移行しています。また、半導体を製造する工程で使用される特殊なテープなどもあります。これらを中心に成長していこうと考えています。

また、CDやDVDは光学的にさまざまな情報を読み取る技術が応用され、レンズ関係の分野へと展開しています。スライド右側には車載カメラレンズユニットを掲載していますが、昨今の自動車には5つから6つのカメラが搭載されています。

当社では、車載カメラレンズユニットの他にヘッドランプレンズなども展開しています。ヘッドランプは、かつてはハロゲンランプが主流でしたが、現在はLEDが主流となっています。LEDは光源とレンズの距離が非常に近いため、レンズにも高い耐熱性が要求されます。このような製品を中心に、BtoBを軸とした成長をめざしています。

マクセルの顧客対応モデル

中村:当社の成長モデルとして、先ほどご紹介した製品をスライドに記載しています。当社製品をご利用いただいているお客さまからは、技術革新や成長をめざす中で、さまざまな課題や要望が出てきますが、当社の技術でそれらを解決することで、製品そのものの価値を高める取り組みを推進しています。

一例として、スライド下段左側のリモコン用途電池について簡潔にご説明します。自動車のパンク検知での利用と医療機器での利用では、要求される仕様や特性が大きく変わってきます。このため、カスタマイズしながら、お客さまの使用目的に合わせて調整し、高付加価値な製品を作っていこうとしています。

スライド下段右側の車載カメラレンズユニットについては、初期段階では前後やサイドの視界を確保する機能に限定されていましたが、現在では自動運転に向けて、前後左右の自動車との距離を測定するセンシング機能を備えるようになっています。

さらに、自動運転に向けて新たな開発をしています。ご存じのとおり、車載カメラは自動車の表面に露出しているため、雨粒や雪が付着すると撮影不良が生じるという課題がありました。これに対し当社は、超音波振動を用いてレンズ表面の水滴や雪を吹き飛ばしてクリーニングする技術を採用しました。このような開発を通じて、お客さまの課題を技術で解決し、共に成長していくことをめざしています。

事業セグメント

中村:ここからは、事業概要を簡単にご紹介します。スライドは、前年度の業績になります。売上高は約1,300億円、営業利益は約80億円と、さまざまな事情により当初の計画からやや下回る結果となり、反省の残る1年でした。一方、次期中期経営計画につながる顧客開拓などの進展がありました。そのあたりをこの先しっかりとドライブしていけるよう、経営を進めていきたいと考えています。

セグメントはスライドのとおり、エネルギー、機能性部材料、光学・システム、価値共創事業の4つがあり、売上構成比はおおむね4分の1前後とバランスが取れています。

詳細はこの先ご説明しますが、今後は特にエネルギーセグメントの成長に注力していく考えです。ただし、前年度は電池材料として使用される銀の価格が大きく高騰し、原価が上昇しました。原価上昇分については売価に反映したものの、タイムラグによって収益性をやや損ねたため、2026年度はこの部分についてしっかりと取り組む方針です。

各セグメントの代表製品

中村:先ほどお話しした4つのセグメントの代表的な製品をご紹介します。スライド上段のエネルギーセグメントには一次電池と二次電池がありますが、代表製品として一次電池をご紹介しています。

コイン形リチウム電池は、医療用途などさまざまな分野で広く使用されています。中央の耐熱コイン形リチウム電池はパンクセンサ用です。日本では法制化されていませんが、米国、ヨーロッパ、中国などでは法律で搭載が義務づけられています。当社はグローバル市場で約80パーセントのシェアを有し、No.1となっています。一方、右側の円筒形リチウム電池は産業用電池で、電気・ガス・水道のスマートメーターなどに使用される電池です。

スライド中央の機能性部材料セグメントでは、半導体に使用されるテープをはじめとするさまざまなテープ関連製品や、ハイブリッド車・EVに使用されるバッテリーのセパレータ事業が中心となります。

スライド下段の光学・システムセグメントは、レンズ関係や半導体関連の事業になります。

当社としては、この3つのセグメントを今後大きく推進していきたいと考えています。

1UP投資部屋Ken氏(以下、Ken):基本的な質問をさせてください。半導体の製造工程で使われるテープの数量は、ウエハの投入枚数増加に伴い伸びていくという理解でよろしいでしょうか?

中村:みなさまもご存じだと思いますが、半導体はウエハを成形した後にいろいろなチップをその上に乗せ、最後にダイサーでカットします。その際、ウエハの上で加工する間にウエハ自体が動いてしまうと加工ができないため、ウエハの底を粘着テープで仮止めします。一方、加工が終わりダイシングでチップに分けた後は、それまでウエハを固定していた粘着力がなくなり、簡単に剥がれる必要があります。

最初は強く、それ以降は剥がれやすいという二律背反の性能を確保しなければならない、非常に難しい用途です。ただし、おっしゃるとおり、生産数量が増えればウエハ枚数が増え、テープ使用量も増えていくという構造です。

Ken:消耗品ということですね?

中村:そのとおり、消耗品です。

需要が高まる高信頼の小型電池(一次電池)

中村:当社は大きく4つのセグメントを展開していますが、今後は電池を中心に成長していきたいと考えているため、電池について少し詳しくお話しします。

現在当社は、スライドに掲載している一次電池で非常に強い製品を2種類有しています。

1つ目は、スライド左側の耐熱タイプのコイン形リチウム電池です。先ほども触れましたが、パンクを検知するために、タイヤの内側に空気圧センサと電源用の電池・発信機が同時に取り付けられ、タイヤと一体になって10年間回転し続ける仕組みです。

回転や振動があるため、非常に高い信頼性が求められます。加えて、タイヤ内部の温度は、通常は外気温プラス10度程度ですが、空気圧が大幅に低下すると100度から120度にも達する高温環境になります。そのような条件下でも、電池が正確に作動する必要があります。これらの理由から、非常に高い信頼性が求められ、しかも10年間交換しないため耐久性も必要とされる難度の高い電池です。

当社はおかげさまで、グローバルで約80パーセントのシェアを獲得しています。現在は四輪車が中心ですが、今後は二輪車にもパンクセンサ機能を導入する計画があり、需要の拡大が見込まれています。

2つ目は、スライド右側のCGM(Continuous Glucose Monitoring)です。これは血糖値を常時モニタリングするための機器の電源となるものです。あまり良いことではありませんが、現在グローバルではおよそ7億人から8億人の方々が血糖値が高いという課題を抱えています。

そのうち、約10パーセントにあたる7,000万人前後の方々は、血糖値が上昇した際には即座にインスリンを投与する必要があります。そのため、常時血糖値をモニタリングし、常に検知できる仕組みが求められています。スライドの電池は、計測デバイスの電源になります。

生命に直結する用途であるため、電池の不動作や稼働不良は人命に深く関わることから、非常に高い信頼性が求められます。現状はデバイスの物量が大幅に増加していることから、このような需要に対応するべく、兵庫県小野市の工場に大規模な投資を行い、対応を進めています。

Ken:少し失礼かもしれませんが、最近では小型の一次電池を目にする機会が減ったように感じます。需要が高まっているとのことですが、この分野は成熟市場のようなイメージもあります。伸びている製品は依然として成長しているという理解でよいのでしょうか?

中村:そうですね。スライドに掲載しているコイン形リチウム電池は、例えばキーレスリモコンなどに使用されています。また、一昔前にはお子さまが歩くと光る靴などにも使用されていました。

これまではそのような用途で一般の方々の目に触れる機会も多かったですが、近年ではこれらの用途から、医療機器や高い信頼性が要求される時計、あるいはパンクセンサなど、BtoB向けの専門性の高い用途へとシフトし、現在はこちらの分野の物量が大きく増加しています。

Ken:ちなみに、交換サイクルも重要かと思います。例えば、パンクセンサでは一度取り付けると長期使用されると考えられます。一方、医療用機器では命に関わる場合もあり、交換頻度は短いということも考えられます。製品ごとに違いはありますか?

中村:おっしゃるとおりです。パンクセンサ向けの電池は、基本的に一度取り付けるとホイール寿命、すなわち車の寿命に相当する10年間は使えないといけません。一見すると10年間使える電池では交換需要が少ないように感じますが、設計が非常に難しく、収益性が高いビジネスモデルとなっています。物量は一般的な用途より少ないですが、高付加価値な製品です。

一方で、医療機器向けの電池については、約2週間で交換が必要です。このため、一定の信頼性が要求されながらも交換頻度が高く、結果として物量が大幅に増加する見通しです。

Ken:ちなみに、パンクセンサの電池が切れていたということは、車検などで発覚するのでしょうか?

中村:システムにもよりますが、電池が不動作になると「電池が切れているので交換してください」というアラートがドライバーに通知されます。また、空気圧の低下やパンクが発生した際にも同様に適切にアラートが通知されます。

少し話が逸れますが、アラート音が大きすぎると運転手が驚いて危険な状況を招く可能性があるため、ソフトなアラート音で知らせるといった工夫がされています。これらは自動車メーカー側の設計次第ではありますが、配慮しながら細かく設計しています。

さまざまな問題を解決する小型の全固体電池

中村:ここまでは一次電池の成長ドライバーについてご紹介しましたが、ここからは二次電池についてご説明します。本日ご紹介するのは、現在話題となっている全固体電池です。全固体電池とは、その名のとおり電池を構成する部品や材料がすべて固体でできている電池を指します。

通常の電池でも材料として固体を使用しますが、一部に液体が使われています。専門用語では「電解液」という表現が使われますが、電池の中に液体を封入しています。

みなさまも電池の液漏れで機械が壊れてしまった経験があるかもしれませんが、大きく分けると水溶液を使用した電池と、有機溶剤を使用した電池の2種類があります。ただし、いずれのタイプも液体を使用している点では共通しており、それが主流となっています。

液体を使うということは、低温では凍結、高温では沸騰するという特性があるため、液体の性質によって電池の作動可能な温度範囲が制約されてしまいます。また、液漏れのリスクも存在します。

さらに、液体を使用しているため、特に二次電池では充電と放電を繰り返すことによって容量が次第に減少していきます。例えば、購入当初のスマートフォンのバッテリーは何時間ももっていたのに、次第に持ちが悪くなる経験をされた方も多いと思いますが、これには液体を使用していることも一因となっています。

そのため、電池を構成するすべての材料を固体にすることで、これらのデメリットを克服しようというのが全固体電池の大きな特徴であり、強みでもあります。当社では、現在9ミリ角程度の小型全固体電池を京都の量産ラインで生産し、実際に市場に向けて供給しています。

足元の主な用途としては、スライドの産業用ロボットがあります。通常、関節の駆動情報をバッテリーでメモリとしてバックアップしています。少しわかりにくいですが、従来はスライド中央の図のように、各関節のモーターに駆動情報を与えるためにハーネスを使用し、すべての線を接続していました。

電池は高温にならないよう土台に配置され、ハーネスによって接続されています。そのため、過度な動作によってハーネスが切れてしまったり、使用している一次電池の定期的な交換などが必要となり、結果としてメンテナンスコストがかなりかかっている状況です。

そのような課題を解決するために、当社では高温に耐えられる全固体電池を開発し、現在さまざまなロボットで実際にご利用いただいています。

この全固体電池は、関節部分に直接設置していただき、ハーネスを排除することで軽量化を実現しました。また、電池寿命が10年以上あるため、交換の必要がなく、多くのロボットを保有するお客さまについては特にメンテナンスコストの削減につながっています。このように当社は、価値あるソリューションを提供しています。

Ken:スライドの内容についていくつか質問させてください。直近ではAIを含めた自律化や無人化が加速していると思います。FA関連企業も回復の兆しが見えていますが、こうした動向の中でどのような恩恵を受けられるのでしょうか? また、競合との差別化や優位性についても教えていただけますか?

中村:需要面に関しては、今ご紹介したとおり、各社が工場の人員確保に苦慮し、FA機器を積極的に展開している現状があります。この中で、特にロボット分野においては、当社製品が駆動情報のバックアップ用途において重要な役割を果たしており、今後の需要を見込むことができます。そのため、大きな期待が寄せられる市場であると考えています。

Ken:差別化についてはいかがでしょうか?

中村:全固体電池は大きく2種類あります。細かいご説明は省略しますが、当社が手がけている全固体電池は、先ほどご紹介したパンクセンサ用の電池や血糖値測定器向けのCGM電池などと、作り方が非常に似ています。全固体電池は粉体を混ぜ合わせたり、押し固めて電池を構成していくため、当社の強みを発揮でき、その分野では最前線を進んでいると考えています。

Ken:製品を導入するにあたっては、FAメーカーさまに採用いただくようなかたちになるのでしょうか?

中村:当社の販売経路として、特にFA機器であれば、ロボットに絞ってお話しすると、大きく2つの経路があります。1つは、先ほどご紹介した新しいロボットです。ハーネスを使わない軽量化ロボットにはじめから組み込んでいただきます。この場合、ロボットの生産台数に応じて、当社製品の出荷が増えていくというかたちになります。

もう1つは、すでに導入されているロボットや、ロボット以外の生産ライン、機械を動かしていくシーケンス制御と呼ばれるものです。少し専門的な話になりますが、駆動情報をPLCという機械で保持しています。これらは一次電池でメモリが飛ばないようにバックアップしていますが、電池切れのタイミングがわからないため、交換頻度を短くするなど、さまざまな手間がかかっています。

形状互換が可能な当社の全固体電池をご提供することで、通常時はフル充電状態を維持し、長期休暇などでラインを停止して電源が落ちた場合でも確実にメモリが保持され、全固体電池でバックアップができるという価値を提供しています。

これにより、工場ではメンテナンスが不要となるため、現在はそのような拡販をめざしています。

Ken:お話をうかがっていると、同じ形のまま全固体電池に置き換えられるのであれば、切り替えが進みそうだと思います。すみ分けについて、今後はどのようになるのでしょうか?

中村:すみ分けというのは、どのような意味でしょうか?

Ken:例えば、「この部分ではまだ一次電池を使いますが、こちらでは全固体電池を優先的に使いたい」というようなことです。

中村:良いご質問をありがとうございます。一次電池については、充電ができないことや一部環境負荷の観点から見ると使い捨てになることから、若干のデメリット、すなわちネガティブな要素があります。

一方で、先ほどご紹介したように、パンクセンサ用途であったり、インフラ、例えば電気・ガス・水道のスマートメーターに使う電池は10年間交換不要です。その結果、交換が不要であれば、廃棄頻度や環境負荷も低減し、また、二次電池では10年もつのは難しいため、一次電池の需要はしっかり確保されており、成長も期待できるという点が大きいです。

さらに、医療用の電池に関しては、電池寿命が残っていたとしても、安全衛生や感染症の観点から、使い回しや部品の再充電・再利用が基本的に認められていません。そのため、廃棄面では不利な点があるものの、安全性や医療上の観点から需要は確保されているという側面もあります。

Ken:「この用途には一次電池が適している」とか、先ほどのライン停止のお話のように、頻繁にメンテナンスを行わなければならない場合には全固体電池が適しているとか、用途によるすみ分けが進むということですね?

中村:おっしゃるとおりです。

Ken:理解しました。次に、利益率についてうかがいます。全固体電池のほうが利益率は高いのではないかと考えていますが、その点はいかがでしょうか?

中村:医療用やパンクセンサ向けの一次電池自体も収益性は優れた製品です。しかし、全固体電池は使用期間が10年間に及ぶことや、さまざまな価値を持っているため、当然それ以上の収益性を確保していく方針です。

ただし、現時点では立ち上げ期にあり、物量自体が少量であるため、事業規模が整った際には、一次電池の高付加価値品を超える収益性をしっかり確保することをめざし、さまざまな取り組みを進めています。

アナログコア技術が高信頼の小型電池を生み出す

中村:お話にありました全固体電池や一次電池を含め、当社は電池を中心に競争力を高めていこうとしています。その中で、スライドに記載しているように、技術力を向上させ、成長を推進するための非常に重要なアナログコア技術として、3点を掲げています。

1つ目は、「まぜる(混合分散)」という技術です。書くと非常に簡単そうに見えますが、量産の中では非常に難しいプロセスです。購入した粉体自体に粒度分布があったり、ロットによって品質が異なることもあります。最終製品である電池の性能を損なわないよう、当社でそれらの素材をうまく混ぜ合わせたり、粘度をきちんとコントロールするプロセス技術が、非常に重要です。

2つ目は、「ぬる(精密塗布)」という技術です。若い方には少しなじみが薄いかもしれませんが、カセットテープでは、磁性粉という粉体をペースト状にしてフィルムの上に薄く均一に塗ります。塗り方の上手・下手は、再生される音の良し悪しが決まるため、最終製品の差別化になる要素でした。当社は、そのようなコーティング技術においても高いレベルの技術を保有しています。

3つ目は、「かためる(高精度成形)」です。粉体を押し固めることは非常に難しいのですが、それに加えて精密な成形技術、樹脂を寸法精度や耐久性を含めて成形できる技術も非常に重要です。当社はカセットテープやビデオテープなどの筐体で、成形技術を積み重ねてきました。

「規模の拡大」と「先進性の追求」

中村:アナログコア技術を中心に今後当社が大きく成長するためのポイントとして、まずは規模を拡大していく必要があります。また、規模を大きくしていくためには、当社の技術や製品が先進性を備えていることが重要です。当社では、この両面を強化していく方針で進めています。

「規模の拡大」として、直近では外部連携を強化しています。具体的には、3月に福島県郡山市にある村田製作所さまの一次電池事業を譲り受けて、マクセルサクラという会社として連結化しました。今後もさまざまなオプションを含めて、外部連携をしっかりと進めていきたいと考えています。

規模の拡大と合わせて、「先進性の追求」もしていきます。電池は、プラスとマイナスの材料を組み合わせることで、原理上は無限の種類の電池を作ることが可能です。電圧や電流、耐久性など実使用に耐えられる組み合わせに限られるため、実際には数種類程度の電池に絞られますが、可能性という点では無限の組み合わせが考えられます。

ここについては、当社が内部で技術開発を進めるだけでなく、外部連携としてベンチャー企業にさまざまな技術開発を依頼しながら最先端の技術を取り込み、新しいケミストリーの電池の開発などもめざしていきたいと考えています。

マクセルは、“高信頼の小型電池領域”のフロントランナーへ

中村:足元の売上構成比は、4つのセグメントがおおむね4分の1ずつです。しかし、今後は小型電池を中心に成長していきたいと考えており、このたび「Micro batteries. Maximum impact.」という新しいバイラインを設定しました。

当社は、小型電池領域でフロントランナーをめざすことをあらためて宣言し、取り組んでいきます。

MEX26の2年目の進捗

中村:中期経営計画についてご紹介します。スライドには、現中期経営計画を記載しています。2024年度から2026年度までの3年間となり、当年度は最終年度に該当します。2年目となる2025年度までの進捗状況と、2026年度の見通しを示しています。

当社は2014年に日立製作所から独立し、上場企業となりました。その後、事業的には厳しい時期もあり、2019年には若干ですが赤字となりました。その状況から再び事業改革を実行し、人員削減などを行いながら再成長をめざして、前中期経営計画「MEX23」と現中期経営計画「MEX26」という施策を進めています。

前中期経営計画では、リストラを含めたさまざまな事業改革をひととおり進めてきましたが、不採算事業の整理など、マイナスを削減する取り組みをしっかりと進めました。その成果が一定程度見られる中で2024年から始まった現中期経営計画では、マイナスの削減にとどまらずプラスの拡大を図る方針を掲げています。具体的には、当社ドライバーの事業において、お客さまの課題を丁寧に拾い上げ、それに対して適切な投資を進めています。

スライド右側には、具体的な施策を記載しています。引き続き事業のメリハリづけを進めるとともに、既存事業に加えて全固体電池をはじめとする「まぜる・ぬる・かためる」の技術を活用した新規事業の立ち上げに注力しています。

営業については、お客さまのお困りごとが新しい技術開発のきっかけとなるため、お客さまのニーズをしっかりと把握していく活動を強化しています。

また、経営基盤の強化を図りつつ、大きく成長するためには、確実な回収を見込める投資を行うことが重要です。そのため、現中期経営計画期間では、350億円の成長投資を実行します。この投資は当社にとって非常に大きな規模になりますが、着実に進めていきます。

あわせて、株主のみなさまへの還元にも注力しています。現中期経営計画期間では、累計で総還元性向100パーセント以上をめざし、2026年度も含めて計画を確実に遂行できる見通しです。

Ken:株主還元について質問します。現中期経営計画期間で総還元性向100パーセントを掲げられており、2026年度も実行できるというお話ですが、今後は成長投資などもある中で、株主還元の考え方をどのように構築されていく計画でしょうか? お話しいただける範囲で教えてください。

中村:現在は中期経営計画期間の最終年度ですが、同時に次期中期経営計画の準備期間にも入っており、まさにご質問のあった株主還元を含めて議論を始めているところです。配当やDOEといった話もあがっていますが、さまざまな切り口や還元の方法があると思います。そうした点を、関係者を含めてしっかりと議論しながら検討を進めています。いずれにしても、投資家のみなさまの期待に応える還元を実現できるようにしていきたいと考えています。

MEX26 最終年度とその先の本格的な成長フェーズに向けて

中村:当社は2019年頃に厳しい時期がありましたが、なんとか収益力を回復すべく取り組みを進め、一定の進捗を達成してきました。また、現中期経営計画期間では、350億円という大規模な投資を含め、将来の成長ドライバーへの投資もしっかり進めています。

2027年度から始まる次期中期経営計画では、業績や資本効率もきちんと向上させ、エクセレントカンパニーになることを、なんとしても実現したいと考えています。

以上です。

質疑応答:全固体電池を成長のメインドライバーとすることによるリスクについて

飯村美樹氏(以下、飯村):「全固体電池を成長のメインドライバーとする上で、量産化や本格的な事業化を加速させるポイントは何でしょうか? 全固体電池に比重を置くことにリスクはないのでしょうか?」というご質問です。

中村:私自身のお話になりますが、現在はこのような立場として関わっていますが、過去には電池の技術者として活動していました。当時、液体を使用しない全固体電池は、電池エンジニアや業界人にとって「夢の電池」でした。

体積や重量という制約の中でどれだけのエネルギーを蓄えられるかが、電池の最大の技術的な課題となります。しかし、液体を使用することで体積や重量のロスが大きくなり、これが性能に影響を与えています。一方、全固体電池は液体を使用しないため、電池性能の向上はもちろんのこと、これまで液体を使用する電池では難しかった使い方が大きく広がる可能性を持っています。

また、電池を動作させる温度範囲などでも、液体を使用することで発生する制約が一切なくなり、さらに寿命も現在の二次電池と比べて10倍、あるいは数十倍となる可能性があります。そのため、新しい全固体電池は、従来の電池では使用が難しい用途やアプリケーションにも適応できる期待が大きく、製品としての価値もあります。

加えて、当社の技術である「まぜる・ぬる・かためる」というプロセスが全固体電池の実現にぴったり適合しています。これが、当社が大いに期待を寄せる理由の1つです。

全固体電池に限らず、電池はエネルギー産業の一種といえます。さまざまな機器を動かすための電源として、エネルギー産業がなくなることはありません。また、現在の技術で満足することなく、新たな要求が次々に高い水準で求められる中、成長ドライバーとして非常に有望な分野であると考えています。

飯村:本格的な事業化を加速させるために必要なポイントは何だとお考えですか? 

中村:さまざまなポイントがありますが、今ご説明した中では、技術面でのフロントランナーとして全固体電池の開発を進め、マーケットに提供していることです。

しかし、まだ9ミリ角程度の非常に小さい電池であるのが現状です。現在はバックアップ用途として、駆動情報をバックアップするための電池にとどまっていますが、全固体電池のサイズを大きくする開発に力を入れています。

これにより、主電源としてご利用いただけるようになり、「ハーベスティング」と呼ばれる技術で充電と組み合わせることで、ほぼ永久的な電源をさまざまな場所にセットしていけるようになると考えています。

インフラの遠隔モニタリングなどのさまざまな用途に広がり、ますます楽しみな領域になっていきます。そのため、全固体電池を大きくすることが、1つのブレイクスルーの鍵になると思います。

質疑応答:利益率向上と目標達成を確実にするブレイクスルーについて

飯村:「2030年に向けた本格的な成長フェーズにおいて、利益率向上と目標達成を確実にするブレイクスルーは何でしょうか?」というご質問です。

中村:奇策はなかなかありませんが、ベースとなる差別化技術をしっかりと磨き、それを応用することで、お客さまの高次元の課題をいち早く見つけ出し、それを技術で解決して価値につなげるサイクルを迅速に回していくことが、月並みな表現ですが、当社にとって最大のキーポイントであると考えており、現在も注力しています。

質疑応答:海外市場の将来展望について

飯村:「中長期的には、やはり国内より海外のほうが成長余地は大きく、海外の売上高比率が高まっていくのでしょうか?」というご質問です。

中村:スライドにもあるとおり、現在の当社の売上高は、約半分が国内、残り半分が海外となっています。このような状況下で、日本は今後、人口減少や経済活動の縮小により、マーケットサイズとして厳しい状況が予想されます。一方で、海外については潜在的なマーケットサイズの面で有望であり、期待が大きいことが前提としてあります。

米国では、血糖値関連の製品を含め、医療用途では圧倒的に先進的な取り組みが進められています。リスクが多少高くても挑戦的な試みを行うなど、医療分野での取り組みが加速しており、お客さまのお困りごとを把握しやすい環境があります。また、ヨーロッパは自動車の先進国が多く、さまざまな技術革新が進んでいます。

このように、地域ごとの特徴やマーケットの質に配慮した開拓を進めることで、自然と海外売上比率が向上していくと考えています。

質疑応答:海外から見た御社のイメージについて

飯村:「御社自身は、海外から見たマクセルはどのような会社だと思われていますか?」というご質問です。

中村:お恥ずかしいことですが、世代によってまったく異なります。冒頭でもお話ししましたが、40歳前後より上の方はカセットテープや記録メディアという印象を持っていただいており、海外の方のほうがその認識が強いです。ただし、日本では残念ながら、カセットテープやビデオテープを連想する方が少し減ってしまっています。一方、欧州や米国では、「マクセル」といえばいまだに記録メディアの会社という認識を持っていただいており、高い認知度と良いイメージが根づいています。

実際にはそれ以上にBtoBを中心とした会社へと変貌していることをお伝えすると、逆に驚かれ、「そんなふうに変貌していっているのですか?」と受け取られます。当社も、日本の状況と海外での状況がこれほど異なるとは少し驚きでした。

飯村:御社に対して高性能という非常に良い印象が海外ですでにある中で、新しい技術を展開しているということは、なかなか印象がよさそうですね。

中村:そうですね。それは先人の方々の貢献のおかげで、北米やヨーロッパにおいても良いイメージをしっかり持っていただけていますので、これを守りつつ、中身は今日ご説明したような「BtoBのエクセレントカンパニーとなっています」のような良いスイッチングをイメージしていただけるよう、努力していきたいと思います。

質疑応答:中長期におけるエネルギーセグメントの成長戦略について

Ken:事業ポートフォリオの考え方についておうかがいします。現状では光学・システムセグメントが利益面で牽引しているように見えますが、中長期的には全固体電池を含めたエネルギーセグメントがこれに匹敵し、逆転することをめざした作戦という理解でよろしいでしょうか?

中村:おっしゃるとおりです。当社としては小型電池を中心に大きく成長していこうと考えています。スライドの収益性に関しては、原材料費の高騰を含む影響で、本来の実力を反映した数字にはなっていません。足元の事業構成においてもエネルギーセグメントとして高い収益性を確保できており、先ほどご説明した医療用途や産業用途、自動車用途といった高付加価値エリアでの成長もきちんと見込めています。

質疑応答:組み込み用全固体電池の実証実験と今後の展望について

Ken:「昨年のSUBARUさまとの生産ラインの全固体電池のテスト運用は安川電機さまとの協業でしたが、安川電機さまとの取り組みの進捗などはどのような段階にあるのでしょうか?」というご質問です。

中村:組み込み用全固体電池について、ロボットメーカーさまと協業し、取り組みを進めています。SUBARUさまの工場では、既存のロボットや既存のラインで一次電池を全固体電池に置き換える取り組みを、実証実験として進めています。実証実験は継続中ですが、現時点で期待する性能や結果が出始めています。一定の評価が完了すれば、工場内電池の当社電池への置き換えの加速をめざしたいと考えています。

中村氏からのご挨拶

中村:本日はご視聴ありがとうございました。冒頭にお話ししたとおり、当社はこれまでBtoC事業として「あったらいいよね」という領域で成長を図ってきた会社ですが、現在は「あったらいい」ではなく「なくてはならない」「ないと困る」といった「なくてはならない」会社をめざしています。

BtoB領域では、自動車、医療、社会インフラといった付加価値の高いマーケットで、しっかりと成長してきます。足元では、本日ご紹介した製品を含め、一定の進捗や手応えを感じています。

引き続き、ご支援いただけると大変ありがたく思います。

いま読まれてます

記事提供:

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

MONEY VOICEの最新情報をお届けします。

この記事が気に入ったらXでMONEY VOICEをフォロー