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アンジェス Research Memo(4):HGF遺伝子治療用製品の市場規模は米国だけで2千億円超と試算(2)

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■アンジェス<4563>の主要開発パイプラインの動向

1. HGF遺伝子治療用製品
HGF遺伝子治療用製品は、血管新生作用を活用して、症状が進行した慢性動脈閉塞症患者向け治療薬として開発が進められてきた。慢性動脈閉塞症は、血管が閉塞し血流が滞ることで組織が潰瘍・壊疽を起こし、最終的に下肢切断を余儀なくされることもある重篤な疾患である。現在の治療法としてはカテーテル治療や血管バイパス手術などが行われているが、手術ができないケースも多く、新たな治療法の開発が求められている。HGF遺伝子治療用製品は、血管が詰まっている部位周辺に複数回注射投与することによって新たな血管を作り出し、血流を回復させることで潰瘍の改善を図るものである。

米国において、2019年6月に改定された包括的高度慢性下肢虚血に関するグローバル治療指針※や治験担当医師の提案を踏まえて、下肢切断リスクの低いステージ1または2の患者を対象に後期第2相臨床試験を実施した。重症下肢虚血の患者はがんと同様に早期の治療開始が重要であるという治験担当医師の仮説に基づき、試験をデザインした。

※ グローバル治療指針(Global Vascular Guideline:GVG):包括的高度慢性下肢虚血(CLTI:Chronic Limb-Threatening Ischemia)の初期段階から適切な治療マネジメントを提供することで患者のQOLの向上を図ることを推奨している。同ガイドラインでは臨床ステージを4段階(clinical stage1~4)に分け、それぞれのステージにおける治療方針が示されており、米国での後期第2相臨床試験は下肢切断リスクの低いclinical stage1と2を対象とした。このステージの患者には、まず潰瘍の治療を考慮することがガイドラインで推奨されている。

主要評価項目として「治癒までの期間」と「投与後6ヶ月時点で完全治癒した潰瘍の割合」を設定し、HGF遺伝子治療用製品またはプラセボを4週間間隔で4回投与するプラセボ対照無作為化二重盲検比較試験を実施した。被験者を4mg/回、8mg/回、プラセボの3群に分類し、12ヶ月の観察期間を設けてデータ収集を行った(被験者数は途中脱落者も想定して全75例を組み入れ)。治験結果をまとめた治験担当医師の論文が、2025年11月に米国心臓学会(AHA)が発行する学術誌「Circulation: Cardiovascular Interventions」※に掲載された。具体的な内容として、治癒までの期間が本剤群で84日であったのに対してプラセボ群では280日であったこと(p=0.007)、6ヶ月時点で完全治癒した割合は本剤群が63.3%であったのに対してプラセボ群は38.5%であったこと(p=0.053)、12ヶ月時点で治癒した潰瘍の割合は本剤群が77.6%であったのに対してプラセボ群は46.2%であったこと(p=0.010)が確認された。以上から、HGF遺伝子治療用製品は中等度のCTLI患者の潰瘍完治までの期間を優位に短縮し、有望な非外科的治療法となる可能性があると結論付けている。

※ 心臓や血管の病気に対して、カテーテルなどを用いて行う低侵襲な治療法を研究・実践する分野である心血管インターベンション分野に特化した査読付きの学術誌であり、ほかの学術誌に掲載される論文にも参照論文として引用される機会が多く、影響力の大きい一流学術誌として評価されている。

同試験結果に基づき、FDAより画期的新薬(ブレイクスルー・セラピー)に指定※を受け、さらにFDAと協議したうえで、臨床試験を完了とし、BLA申請により上市を目指すことを2025年8月に決定した。この決定に伴い、HGF遺伝子治療用製品の製造委託先であるBoehringer Ingelheim Biopharmaceuticals GmbH(以下、ベーリンガー)と、承認取得及び上市に向けた原薬の製造体制を構築するための受託開発・製造契約を締結した。従来は、小規模設備で原薬を製造・供給してきたが、上市するとなれば大型培養設備を構築する必要があるため、製造体制を構築するまでに一定の期間と投資資金を要することになる。ベーリンガーでは、BLA申請に向けて製剤、製造方法及び品質管理に関するCMC(Chemistry, Manufacturing and Controls)体制の構築を進めている。同指定により、BLA申請書類(非臨床、臨床、CMC)は準備ができた領域から順次提出できるため、審査開始の前倒しが可能となる。同社は2026年12月期第3四半期に最初の申請書類をFDAに提出し、ベーリンガーの原薬製造に関わるCMC情報を最終申請書類として2027年12月期第1四半期に提出する予定だ。最終申請書類を提出後、6ヶ月で承認の可否が明らかとなり、順調に進めば2027年内にも販売を開始できる可能性が出てくる。

※ ブレイクスルー・セラピー指定制度とは、重篤な疾患や生命を脅かす疾患に対する新規治療薬の開発と審査を迅速化することを目的にFDAが導入した制度で、臨床試験の結果などを基に既存の治療法よりも顕著な改善を示す可能性のある開発品が指定を受ける。

販売開始にあたって重要となるのは、販売ネットワークを持つ大手製薬企業との販売ライセンス交渉である。まず秘密保持契約(NDA)を締結したうえで担当者レベルでのデータ提供から着手し、2026年9月以降に経営トップ同士の協議を行い、同年12月頃にLOIを締結して2027年12月期第1四半期の本契約締結を目指している。疾患が重なり、シナジーが期待できる糖尿病治療薬や循環器領域で強みを持つグローバル企業を中心に検討を行い、米国専門医の協力も得ながら契約締結を目指す。契約を締結した場合は、契約一時金やマイルストーン収入、上市後の販売に関わるロイヤリティ収入等を得られることになる。同社としては、財務状況を勘案し、可能な限り早期に資金を得られる形で交渉を進めたい考えだ。なお、契約内容に関しては欧州市場を含むグローバル展開を視野に、パートナー交渉を進める可能性もある。日本では米国で販売承認を得られた後に、PMDAと協議を進める予定にしている。

契約一時金やマイルストーン収入については、ピーク時売上高を基に一定率を乗じて算出するケースが多い。HGF遺伝子治療用製品の市場規模については、米国だけで2千億円を超える規模になると弊社では試算しており、契約一時金も相当額になることが期待される。米国での対象患者数は調査会社の調べで年間最大50万人程度と試算されている。CLTI(包括的高度慢性下肢虚血)患者約200万人のうち、HGF遺伝子治療用製品の対象となる軽度から中等度の患者(ラザフォードステージ5、WIfI1/2)の比率が最大43%、患者数で約86万人となるが、このうち、血管バイパス手術など血行再建術が何らかの理由でできない患者と、血行再建術を拒否した患者、血行再建術を実施後に予後が悪化した患者が対象となり、あわせると最大約50万人となる。これに対して、同社は実際の対象患者数として20~30万人と見積もり、このうち20%の患者(4~6万人)がHGF遺伝子治療用製品を利用することを想定している。薬価は血行再建術の施術費用75千米ドルが目安となるが、患者負担も考えると40~45千米ドル程度が妥当と見られ、想定患者数と掛け合わせると16~27億米ドル、円換算で2千億円以上となる可能性がある。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)

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