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「次のNVIDIA」を探しても意味なし。あの中島聡が語る「メタトレンド投資」本当の狙いとは?

AI、半導体、ロボット、創薬――次の巨大産業がどこへ向かうのかは、ある程度見えてきています。しかし、その波をつかんで大きく成長する企業を事前に見抜くのは容易ではありません。メルマガ『週刊 Life is beautiful』では、著者で著名エンジニア・投資家でもある中島聡さんが、「次のNVIDIA」を探すのではなく、確信のあるメタトレンドに複数の企業へ長期投資する考え方を解説します。

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メタトレンド投資

9月初旬の日本出張中は1日2本ぐらいのペースでYouTubeインタビューを受けました。主たる目的は、書籍「2034 未来予測」のプロモーションですが、1つ前の書籍「メタトレンド投資」に絡めた株の話の方が視聴数が稼げるため、自然にそうなるようです。

そうなると必ず聞かれるのが「次のNVIDIAはどこか?」という質問ですが、それがわかれば苦労はしません。私の投資手法は、ひとことで言えば、

  • 時代の大きな流れ(メタトレンド)を読み
    その変化を牽引しそうな企業に長期投資をする
  • ですが、1に関してはアンテナをしっかりと張っていればかなり正しく予測できるものの、2に関しては確実な手法などありません。自ら製品を購入したり、CEOのカリスマ性も評価しますが、確実に分かることと、そうでないことはきちんと切り分けて考える必要があります。
    そこで、いくつかの技術革新に関して、何が見えていて、何が見えていないかを「メタトレンド投資」という観点から私なりにまとめてみたいと思います。

    AI
    AIが私たちの生活や社会にインターネットやスマホ以上のインパクトを与えることは確実です。10年もすれば、仕事・生活のあらゆるところでAIが活用され、それ以前にAIなしでどうやって社会が動いていたかが想像できないぐらいになります。24時間、私たちの見ているもの・聞いているものを一緒に把握して助言や仕事をしてくれる「AIアシスタント」は当たり前のものになるし、科学進歩の多くをAIが加速するようになります。

    しかし、どんな会社が今後伸びるかを予想するのは簡単ではありません。NVIDIAやハイパースケーラー(Microsoft、Amazon、Googleなどの巨大なAIデータセンターを運営する会社)のビジネスが伸びるのは当然ですが、すでに株価に織り込まれているとも言えるので、ここから10倍・100倍を目指す場合に適した株ではないとも言えます。
    今年から来年にかけて、フロンティア・ラボ(最先端のAIモデルを提供する会社)と呼ばれるAnthropicやOpenAIが上場するとの観測もありますが、中長期的に彼らがしっかりとした利益を上げる会社として成長し続ける保証はありません。Google、xAI、Metaを交えた戦いは熾烈だし、オープン・ウェイトなモデルの追い上げも激しく、コモディティ化して利益を上げられないビジネスになってしまう可能性も十分にあります。

    半導体
    AIの時代には「知能・思考」がインフラ・サービスとして提供されるようになりますが、そこで欠かせないのが半導体です。

    そんな中で、「NVIDIAの1強状態がいつ崩れるか」を予測するのは簡単ではありませんが、NVIDIAの大口顧客(Google、Amazon、OpenAIなど)が自社製チップを作り始めている点は注目に値します。その背景には、AIが優秀になるにつれて、半導体の設計や半導体の上で動くソフトウェアの最適化のコストが大きく下がっているというトレンドがあり、これはとても重要です。かつてはNVIDIAのようなチップ専業メーカーにしかできなかったことが、大口顧客自身の手の届くところに降りてきており、これはNVIDIAの優位性を中長期的に脅かす要因になり得ます。

    また、半導体に関しては「台湾リスク」は無視できません。それが軍事力・政治力のどちらを使ったものになるかは分からないものの、中国が台湾を併合するのは時間の問題だと考える専門家もおり、台湾以外の西側の国で最先端の半導体を1日でも早く作れる体制を作ることは安全保障の観点から見て急務です。
    その観点からは、TSMCの海外工場(アリゾナ・熊本)、サムスン、ラピダス、TeslaとSpaceXが計画する自社半導体工場「テラファブ」などが重要な役割を果たす可能性は十分にあり、それを1つの大きなトレンドと見て長期投資をするのは悪くないと思います。

    フィジカルAI
    既にAIは、ホワイトカラーの職の多くを置き換えることができるレベルにまで進歩していますが、その次に来るのが、ロボット・ドローン・自動運転車を活用した肉体労働の置き換えです。
    これまでなかなかビジネスとして立ち上がらなかった人型(ヒューマノイド)ロボットが、AIの進化により、社会のあらゆるところで活用されるようになります。この分野では中国のロボット・ベンチャーが目立っていますが、Tesla、Figure AI、Boston Dynamicsの3社がそれぞれ工場での活用を重視して開発している点は注目に値します。

    この分野ではヒューマノイドの進化が目覚ましいので、そこにばかり注目が集まっていますが、既存の工場向けの産業ロボットにもAIの技術の適用は十分に可能であり、それによって新しい価値が生まれ、それが市場全体を大きくする可能性が高いので、そのトレンドに上手に乗れる企業は大きく成長します。

    ハードに関しては、モーター・減速機・バッテリーから量産体制まで、中国に圧倒的な勢いがあります。しかし、EVや太陽光パネルで中国のサプライチェーンに頼りすぎたことを反省する米国は、ロボットやドローンに関しては中国製を排除する方向に動いており、その穴を埋められるのは、精密部品や産業ロボットで実績のある日本と韓国です。ここに「特需」が生まれる可能性は十分にあり、そのチャンスをしっかりと捉える企業には大きな成長が期待できます。

    自動運転は、乗用車だけでなく、トラック、トラクターやコンバインなどの農業機械、建設機械などにも適用できるので、そこにも大きなポテンシャルがあります。ドローンが分かりやすい例ですが、1台に1人のパイロットが必要な限り、ドローンの市場はパイロットの数と人件費で頭打ちになります。自動運転になった途端にその制限が外れるため、これまで適用できなかった範囲に応用できるようになり、市場そのものが数十倍~数百倍に成長する可能性が十分にあります。

    医療・素材AI
    AIにより科学の進歩が加速されていると期待されていますが、そんな中ですぐに社会に価値を提供してくれそうな分野が、新しい薬や素材の開発です。Google DeepMindが開発したAlphaFoldに始まるタンパク質の構造予測・設計AIは、これまで莫大な時間とコストがかかっていた創薬のプロセスを大幅に短縮する可能性があり、特定のがん細胞を攻撃する薬をオンデマンドで作ったり、体の特定の部位に指令を送るホルモンなどを人為的に作ることを容易にすると期待されています。

    健康に関わることで規制も厳しいので、IT系の企業がこの分野で単独でビジネスをすることは簡単ではなく、既存の医薬品メーカーなどを絡めた形で市場は成長する可能性が高いので、医薬品メーカーとIT企業との間にどんな関係が結ばれるかに注目するのが良いと思います。
    AIは24時間休むことなく大量の実験を繰り返すことができる点が強みですが、実際の実験装置を扱わなければならないとなると、そこがボトルネックになります。その意味では、シミュレーションの技術が今後ますます重要になりますが、ミクロの世界での物質の振る舞いをシミュレーションする際には量子の効果が無視できないので、そこにこそ量子コンピュータが活躍できるのではと、期待しています。ただし、実用的な量子コンピュータがいつ登場するのか、そしてどの企業がそれを実現するのかは、今の時点では全く「見えていない」側に属する話です。

    見えている未来と見えない勝者
    こうして並べてみると、「見えている」のはメタトレンドそのものであり、「見えていない」のはそのトレンドの中でどの企業が勝つか、ということになります。だからこそ私は、「次のNVIDIA」を1社に絞るのではなく、確信のあるトレンドごとに、その恵みを受けそうな企業を複数選んで長期で持つ、という手法を取っています。高騰する銘柄を的中させるのは困難ですが、トレンドに乗ることは十分に可能、ということです。

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