法体系、一番強いのはどれなのか?
河野:「特別法」と「一般法」という枠があって、特別法が優先なんですよ。民法を見て、これはこうだと思っても、実は借地借家法がありましたってなると、結論が全然変わったりする。
三浦:民法と借地借家法でいうと……?
河野:借地借家法が優先。「特別法は一般法を破る」っていって、実は僕ら弁護士にとっても恐ろしい原則なんですね。
三浦:どういうことなんですか?
河野:僕らは、民法だったらこうなるっていうのは知識として持っているんですけど、実際に事案が来た時に民法よりも特別な法律があったら、そちらが優先になる。
ということは、特別法にあるかないかまで調べないと実は答えが出せない。それを見落としていると僕のミスになってしまう。
三浦:細かいものまで引っ張ってこなきゃダメってことですね。例えば民法でいうところの借地借家法っていうのが特別法にあたる。
河野:民法だと、基本借りたものはすぐ返せって言えるんですけど、借地借家法はそうはなっていないんです。
三浦:住んでいる人に有利になっていますね。普通だったら大家さんとの関係で対等なはずなのに、いきなり大家さんに出ていけっていわれたら出て行くしかないとか。
河野:家の場合はそんなすぐ出ていけって言われたって困るよ、と。
これがパソコンとか普通のものだったら返せっていうならそれでいいじゃないって話になるんですけどね。
三浦:特別法は一般法を破る、ということは法体系見てみないとですね。法体系のなかで最強のものって何ですか?
河野:憲法。これは究極の一般法だけど、一番強い。
三浦:え、ちょっと待って。そうなんですか?
河野:これだけは例外。憲法はすごく一般的でしょ。
三浦:一般法だけど最強?
河野:最強。これは法律ではないですからね。憲法だけは例外なんですよ。これは国の一番の原則だから、一般的には定められているんだけど、これに反することはできない。
次回やりますけど、たとえば人の権利は尊重しましょうっていうことが書いてあります。これがないと、他の法律も存在し得ない。法律をどうやってつくるかっていうのもここに書いてあるから。
三浦:法律的なDNAの大元ってことですよね。これを真似して作られているってことで、指針がかいてある。それで細かいやつがどんどん派生していって……条文の14条って何でしたっけ。
河野:平等権かな。
三浦:14条の「平等」を担保するためにちゃんと民法っていうのがある。
河野:もともとあれは男女の本質的平等を旨としてっていうのが一番最初に書いてある。民法の一条のところから読みましょうか。
「この法律は個人の尊厳と両性の本質的平等を旨として解釈しなければならない」。
三浦:これって14条を受けて、っていうことでしょうね。
河野:男女平等というところを民法は気にしているんですね。
特に結婚についても民法に書いてあるから、ここで例えば「妻は夫の姓を名乗らなければならない」って書くと、平等っていうのに反しちゃうんですよね。だってどっちの姓を名乗るかっていうのは男と女で決まるはずのないことだから。不公平だからどっちを選んでもいいことになっているんです。
三浦:そういうことなんですね。(つづく)
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『天狼院プラチナノート』 より一部抜粋
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