瀕死のイギリス。EUよりも先に「UK連合王国」がバラバラの危機へ

 

「連合王国」が先に分解

第3に、離脱派の主観的意図は、「国家主権を取り戻す」ことにあったはずだが、結果として起こるのは「連合王国がバラバラになって、最も極端な場合、イングランドだけが取り残されることになりかねないという矛盾である。

英ケンブリッジ大学のブレンダン・シムズ教授は、英国が73年にEUに加盟しても、ユーロには加わらなかったのをはじめ国家主権を手放さなかったのは賢明で、「必要なのは『欧州化する英国』ではなく『英国化する欧州』なのだ」(6月19日付読売)と言う。彼は残留派ではあるのだが、その主張は一風変わっていて、EUの間違いは「全てが緩慢」なことにあって、さっさと「1つの国庫、1つの軍、1つの議会を持つ連邦国家」になってしまえばいいのに、と言う。そうはなっていない現状では「連合国家英国の解体はあり得ない。連合国家という300年続いてきた政治制度に対する信頼と忠誠」のほうが大事だ、と。

このレトリックはいささか分かりにくいが、要は中途半端なEU統合より連合王国のほうがマシということだろう。しかし、ブレグレット(離脱後悔)の流れの中では、むしろ力学は逆方向に働くのではないか。

スコットランドはあくまでEUに留まるという目的のために、もう一度独立のための住民投票を実施する準備に入った。残留派が多数を占めた北アイルランドでも、このままでは北アイルランドとアイルランド共和国との国境が連合王国とEUとの国境になってしまい、自由な行き来が妨げられるので、実生活を考えれば、連合王国から独立してアイルランドと合邦したほうがマシだという方向に傾き始めた。

ウェールズは離脱派が多かったものの、ウェールズ自治議会で最大野党の「プライド・カムリ(ウェールズ党)」のウッド党首は、「連合王国は近い将来に終わる。その時にウェールズだけがイングランドと共に取り残される訳にはいかない」と言って、ウェールズの独立を求めていくと表明した。

それどころか、イングランドの中にあって例外的に残留派が多数を占めたロンドン首都圏でも独立の声が出始めていて、収拾のつかないことになっていく可能性がある。

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