中国と「一触即発」のウソ。実は関係改善で、日中首脳会談の可能性も

 

「正常な軌道に戻す」とはどういうことか?

中国側が日中関係を「正常な軌道に戻す」という意味は、14年11月10日、安倍がAPEC首脳会議に出席するため北京を訪れた機会に、習との初めての(野田政権以来3年ぶりの)首脳会談を開いた際の基調となった「4項目合意」に立ち返ろうということである。

この合意をまとめたのは、その3日前の7日に開かれた谷内・楊会談であり、全文は次の通り。

日中関係の改善に向け,これまで両国政府間で静かな話し合いを続けてきたが、今般、以下の諸点につき意見の一致をみた。

 

  1. 双方は、日中間の四つの基本文書の諸原則と精神を遵守し、日中の戦略的互恵関係を引き続き発展させていくことを確認した。
  2. 双方は、歴史を直視し、未来に向かうという精神に従い、両国関係に影響する政治的困難を克服することで若干の認識の一致をみた。
  3. 双方は、尖閣諸島等東シナ海の海域において近年緊張状態が生じていることについて異なる見解を有していると認識し、対話と協議を通じて、情勢の悪化を防ぐとともに、危機管理メカニズムを構築し、不測の事態の発生を回避することで意見の一致をみた。
  4. 双方は、様々な多国間・二国間のチャンネルを活用して、政治・外交・安保対話を徐々に再開し、政治的相互信頼関係の構築に努めることにつき意見の一致をみた。

外務省HP

1.に言う4つの基本文書とは、言うまでもなく、

  1. 1972年の田中・周の日中共同声明
  2. 78年福田政権下での日中平和友好条約
  3. 98年の小渕・江沢民の「平和と発展のための友好協力パートナーシップの構築」に関する日中共同宣言
  4. 2008年の福田・胡錦濤の「戦略的互恵関係」の包括的推進に関する日中共同声明

──である。これらはもちろん、駐日中国大使館のHPにも「重要文書」として掲げられている。

中国大使館HP

それを踏まえて、14年の「4項目合意」の第3項では、尖閣など東シナ海での緊張に関しては見解が異なるけれども、話し合いで情勢の悪化を防ぐこと、危機管理メカニズムを構築して不測の事態を回避することでは「意見の一致をみた」。

4項目合意に立ち返るとは、特にその第3項に従って海空連絡メカニズムを作動させることを具体的な糸口として、関係を正常化させようということである。

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