日本に「VIPサービス」が根付かないワケ
──先ほど大阪万博の話も出ましたが、その前にやって来る2020年の東京オリンピックも含め、インバウンド市場も正念場を迎えています。高城さんは日本の観光業界の現状についてどう思われていますか?
高城:京都や金沢といった観光都市では、今ごろ慌ててホテルを作ってます。正直、5年遅いと感じます。
このまま、中国バブルが完全に崩壊して、先ごろ米国政府から正式に公開された日米貿易交渉事案詳細にあるように、為替操作ができず円高になったら、日本の観光産業は大打撃です。今は円安だから日本に多くの人たちが訪れますが、円高になったら、いままで通りとはいきません。また、世界的に見るとユーロが危なく、米ドルも不安定になったら、相対的に円高になる可能性も大いにあります。観光地がどう頑張ろうが、全ては為替次第だと考えます。
市場として躍進するのは、中国の次はインドで、今後インド人観光客が日本にどんどん来ることが考えられます。ただ先ほども話しましたが、インドの中でも南インドの新興中間層は、ほとんどがイスラム教徒なんです。それもあって、北インドと南インドでは全く異なる国と思ったほうがいい。何しろ公用語が22個ある国だからです。
実際、インド北部のデリーから中南部のハイデラバードへ行くと、ホント何話してるのか全くわからないんですよ。ハイデラバードの中心地は60%がイスラム教徒なのですが、ここはインド有数のITの街で、現在、ものすごい勢いで伸びています。バンガロールの次は、ここなんです。
彼らも今後は日本に大勢やって来ますが、イスラムに対する対応なんて、日本ではほとんど進んでないですよね。新しいホテルの部屋に、メッカの方角を指し示す指標があるとは思えません。日本の観光業の皆さんとお話しすると、今来ている中国人観光客しか見てません。インド人だと、ヒンズーの人たちは牛を食べないし、イスラムの人は豚を食べない。結局、焼鳥屋だけが大儲けするっていう(笑)。
──あと高城さんは、日本の観光業界は富裕層の取り込みが課題だと、以前メルマガでもおっしゃってましたよね?
高城:どれぐらいの資産を持っている人が富裕層というのかがハッキリ分かりませんが、日本人は関わりが少ないので、彼らの望むものをわかってないと思います。一番典型的なのはVIPサービスですが、東京にもVIPサービスらしいVIPサービスはありませんね。
僕がよくDJをするイビザのクラブには、いわゆるVIPルームがあるんです。そこがだいたい1テーブル座るのに100万円かかるんですよ。そこで、VIPルームの人たちは、だいたい一晩で1千万円ぐらい使う。そういう人は、いわゆる富裕層ですよね。彼らには、VIPサービスが付いていて、なんでもやるんです。
この「なんでも」には、時には「ちょっとした違法行為」も含まれるのが、実はVIPサービスの真髄です。でも、日本にはいない。真面目に観光業を考えている人たちが、真面目にVIPサービスを考えようとしているので、上手くいきません。美味しい鮨屋の秘密は、違法な密猟なことは食通なら皆知っている。でも、目をつぶる。中華も同じ。輸入できない食材を、ハンドキャリーで中国から持ち込む。でも、目をつぶる。このような事実上の違法行為が、VIPサービスなんです。
──そういう真の富裕層に財布を開かせるには、どうすればいいんでしょうか?
高城:財布をどう開かせるという観点じゃなくて、彼らは面白いものを提供したら、いくらでも払うんです。金額なんて関係なくて、他にはない面白い経験を提供できれば、それが1000円だろうが1000万円だろうが関係ないんですよ。お金では買うことができないモノや経験を、お金で解決するのが、VIPサービスです。スイスを拠点にする元DJの友人のVIPサービスマンは、通年、世界中の富裕層を回って、営業と遊びを兼ねてますね。とても、楽しそうな日々を送ってます。もちろん、秘匿事項が多いのでSNSなんて出来ませんが(笑)。