どうしても年金を出したくない国の呆れた「定年延長」という無策

 

年金の財源が破綻するのは30年も前から分かっていたわけで、今頃になって泥縄式に解決策を探っても、上手い方法があるわけがない。老人を雇用して働かそうといっても、今までのように、決められた仕事を正確にこなす、といったタイプの仕事はしばらくたてば不要になり、こういったタイプの働き方に適応している大部分の老人は、実は企業の戦力としては完全に不必要で、雇用すればお荷物になることは目に見えている。企業に負担をかける老人雇用義務より、少ない雇用人員で企業の効率化を進めて黒字を膨らませて、法人税率を値上げしてその金を年金の財源にする方が、企業も老人もハッピーになれる。

そもそも、労働時間と労働場所を拘束して、一斉に働かせるようなやり方は、もはや時代遅れなのである。日本の労働生産性や国際競争力が急速に低下し始めたのは1990年代半ばである。この頃IT革命が勃発して、企業の経営スタイルが大きく変わっていった。単純な労働はロボットがこなせるようになり、社員全員にコンピュータが支給され、労働場所に拘束されずに働けるようになった。

しかし多くの企業は従来通りの労働形態にしがみつき、定時に出社してオフィスや工場の中で、横並びで終業まで働くというやり方を変えようとしなかった。社員一体となって一生懸命働くという工業社会で成果を上げたやり方は、今や企業の業績にとってマイナス要因にしかならないのに、工業社会型の思考に縛られた多くの経営者は、企業に忠誠を誓わせ、上意下達を徹底しようとの方針から、抜け出ることができなかった。

その結果、日本企業の業績は悪化し、国際競争力は加速度的に低下したにもかかわらず、経営者の多くは社員をもっと奴隷のように働かせれば、業績は回復するとの妄想から解放されることはなかった。かくして一部の企業は(もしかしたら大部分かしら)ブラック企業へと転落したのである。

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