ソフトバンクが予言。これから10年で起こる「産業界の大変革」

 

モネ・テクノロジーズの世界観

ソフトバンクグループの新しい取り組みとして、モネ・テクノロジーズ(MONET Technologies)はソフトバンクとトヨタ自動車の共同出資により、18年9月に設立した、自動運転などによる次世代モビリティサービス(MaaSモバリティ・アズ・ア・サービスマイカーを除く交通手段をシームレスにつないで一体化したサービスと見る考え方)のプラットホームをつくる会社。

今年3月に日野自動車、本田技研工業、6月にはダイハツ工業、SUBARU、スズキ、マツダ、いすゞも出資し、日本の名立たる自動車メーカーが参集している。普段はライバルであるこれだけのメーカーが結集するのは異例のことだ。日本で走っている8,000万台の車のうち、約75%の6,000万台が同じプラットホームでつながる計算となる。

モネ・テクノロジーズのビジネスモデル

モネ・テクノロジーズのビジネスモデル

「あと3、4年もすればハンドルがない自動運転の車が登場してくる。ただ、今の日本には自動運転を受け入れる素地は残念ながらないと思われるので、今は1つ1つじっくりと課題の解決に向かって、事業を組み立てている」と、モネの宮川潤一社長兼CEOは語る。

モネ・テクノロジーズの事業イメージ

モネ・テクノロジーズの事業イメージ

今は320を超える地方自治体と、その地域ごとの課題を洗い出し、オンデマンド交通、遠隔医療などの実証実験を進めているところだ。オンデマンド交通とは、顧客の予約が入った時のみ運行する公共交通で、バスとタクシーの中間のようなサービス。遠隔医療というのは、診察室が自動運転で患者の住む地域に移動して医師の診察は病院からオンラインの動画通信によって行うイメージだ。

オンデマンドバスの実験

オンデマンドバスの実験

企業との連携では、「モネコンソーシアム」という業種・業界の垣根を越えた交流団体を3月にスタート。当初、参加した企業は88社だったが、300社を超えるほどにまで増え、どのようなサービスが可能なのかを毎日議論している。サントリーホールディングス、コカコーラ ボトラーズジャパン、JR東日本、三菱地所などがメンバーに入っている。

モネのミッションとして、日本の基幹産業である自動車産業の新しい自動運転の基盤インフラとなることを目的としている。モネという共通のプラットホームの上で、各社の商用車がコンテンツとして動くイメージだ。

また、日本を悩ます少子高齢化、大都市への人口集中によって、地方の公共交通が衰退してしまっている、高齢者の危険な運転、中心市街地のシャッター通り化で買物もできない地域が増えている、といったような社会的な課題に本気で取り組むのを主眼とし、経済的損失の解消を狙っている。

MaaSというと、人と移動をつなぐもので、フードデリバリーのUber(ウーバー)を思い浮かべる人も多いだろう。しかし、モネの世界観は目的型のMaaSで、ウーバーのような商品を便利に届けるための配車サービスとは異なる。人は一般に、お店なり病院なりの施設に自ら移動してサービスを受けに行くが、逆も真なりで、施設が人の居るほうに移動してくるサービスをモネは提案している。

ウーバーが宅配の進化形とすれば、モネは移動販売の進化形のようなものと考えられる。たとえば、固定して設置されている自動販売機は、人の流れに沿って場所を自動運転で移動したほうが、もっと販売効率が上がるのではないか。あるいは、今は自動販売機まで人が車で移動してきて飲料を補充して回っているのであるが、自動販売機のほうが自動運転で営業所まで移動して補充を行い、補充を終えたらまた指定された場所に戻っていくことができると、人手不足の解決になるだろう。これが、モネの考えるMaaSの一例である。

オフィス、コンビニ、行政が設置するトイレ等々、さまざまなものの移動形態が考えられるが、ビジネスを掘り下げるほどぶつかるのが規制の壁。不動産が動産に変わるという新しいビジネスモデルなので、たとえば現状はコンビニやカフェが、隣の市町村に行ってコーヒー1杯、ケーキ1個でも売るのも法律違反になるのを、いかに変えていくかが課題である。

また、1台の車の効率性を上げるにはマルチタスクを導入したいが、朝と夕はバス、昼は宅急便、夜は飲食のデリバリーとして使うとすると、それぞれ許可を出している省庁が違う。一筋縄には行かない。

道路、信号、法律、どれもが自動運転が可能な仕様になっているとは言い難い。自動運転車と運転が未熟なドライバーとの接触事故をいかに防ぐかは、AIを駆使してもなかなかプログラミングが難しいが、いろんな事例から学んで、歩行者を巻き込んだ大惨事になるのを防止するシステムを考案中だ。モネは官公庁、企業と協議しながら、自動運転サービスを始めるにあたって問題となることを発見し1つ1つ解決している段階にある。

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