コロナ休校で混乱。現役教師が明かす、オンライン授業の問題点

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新型コロナウイルス流行拡大防止のため休校となる学校が増加する中、オンライン授業を希望する保護者の方も多いようですが、その実態は通常授業と遜色ないものなのでしょうか。今回の無料メルマガ『「二十代で身につけたい!」教育観と仕事術』では著者で現役小学校教諭の松尾英明さんが、実際にオンライン授業を行ってみて初めて見えてきた問題点等を詳細に記しています。

教育におけるオンラインと現場

学校教員に対しても、在宅勤務が本格的にスタートした。都市部を中心に、全国的に見られる傾向のようである。

全国のご家庭の「うちの子の学校でもオンライン授業をして欲しい」という要望はもっともである。しかしながら、これはどこでもできることではない。実施までのハードルが、公立校の現状では、かなり高い。実施に当たって、最低でも以下の条件が必要である。

  1. 校内のICT環境
  2. 家庭のICT環境
  3. 教員のICTリテラシー
  4. 子どものICTリテラシー
  5. 子ども一人ずつのアカウント配付

まず、通常は学校へのICT関係の予算配分が極端に少ない。学校にそのお金が回る余裕がなかったのかもしれない。そうなればそこと連動して、教員と子ども双方のICTリテラシーは高まっていないことになる。

さらに現状、全ての家庭に一人一台PCというのは、難しい。そうなると、実施しても、自由にアクセスできない子どもたちへも対応した形を並行して考える必要が出る。

さて、そんな中でも、比較的恵まれたICT環境下にある学校は、何とかオンライン学習をスタートしている。私の勤務校もその中の一つである。

さて、やってみるとわかるのだが、複数を相手にオンライン授業というのは、かなり難しい。オンラインでのライブは「朝の会」という形でやっているだけだが、呼名→返事という流れすらも結構難しい。コンピューターが、複数の声に対応できない。何というか、変なタイミングの対応になってしまうのである。リズムとテンポがうまくつかめず、通常に比べるとかなりやりづらい。

全員を前に表情や動きを見ながらのリアルの対応と、かなり違うのである。そこに「空気」がない。感覚的に表現すると、息遣いが感じられないのである。

それでも顔が見られて声が聞けるというのは大きなメリットである。今は難しさが目立つが、利用方法は無限にあるはずである。

今のところ、テキストと動画の配信という形の方がうまくはまっている気がする。一方的な講義ではあるが、ポイントの説明等はこれでできる。

ここで気付いたのが、経験値の大切さである。極端な話、初任者でこの動画配信をやるとなると、かなり難しいのではないかと思われる。動画作成自体は上手いと思うのだが、おそらく授業のポイントがわからない。もっというと、わからないポイント、躓きポイントがわからないのである。

そもそも、小学校でやる問題は、大人から見ると、何を一体どう間違うのかと思うものばかりである。だから、よく知らない人には「中学生と高校生は難しいけど、小学生に教えるのはできそう」と言われる。ここが大きな勘違いで、教える自分さえその問題の意味がわかるのであれば、高校生に教えるのがおそらく最も簡単である(相手が理解できるかどうかが、本人次第ではあるが)。

小学生に教える難しさは、「何でわからないのか、何がわからないのか、わからない」というところである。つまり、一生懸命に教えてもさっぱり伝わらず、お互いに「意味不明」なのである。あまり親(特に高学歴の親)が出しゃばって教えない方がいいというのは、これが理由である。思わず出てしまう「何でこんなことがわからないの!?」という叱責の一言がこれを証明している。親子げんかに発展すること必至である(ちなみに、これは今問題となっている虐待問題とも関連するが、今号では取り上げない)。

動画を作成する時には、ここを落とさずに解説する必要がある。

目の前に子どもがいてくれたら、子どもが「わからない」をたくさん発してくれるので、こちらもわかるのである。これを察知できないと、授業の腕が上がらない。教師の授業の腕の向上は、「わからない」と困っている子どもが目の前にいてくれてこそなのである。

つまり、実際の経験が浅いと、「わからないポイント」をパスしてしまう可能性が高い。以前に書いたが、例えば小学1年生は「文字の一切ないページで授業」というレベルからスタートである。そんな相手に対し、どこで躓くか、何が教えるポイントかなぞ、初めてでもわかれという方が無理である。

目の前に子どもがいないことで、逆に見えることも出てきた。ICTを通して、自分の新たな経験値を高めていきたい。

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【著者】 松尾英明 【発行周期】 2日に1回ずつ発行します。

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