「俺はSEXが上手いんだ」という男ほど女性に嫌われる科学的な理由

shutterstock_148040216
 

変化の激しい現代において、既存の価値観や過去の成功体験に固執ばかりしていては成長を望むことができません。環境の変化に適応しながら自らを変えることこそ、今求められる姿といえるでしょう。『アンラーニング』と呼ばれるこの考え方が、男女間のセックスにおいても重要だというのは、心理学者でメルマガ『富田隆のお気楽心理学』の著者である富田隆さん。富田さんは古い考え方を捨てるだけではなく、新たな変化に対応するための柔軟性も必要だと説きます。

性的楽天論。 アンラーニング 

週刊誌の記者の方から、セックスに関する質問がありました。中高年のセックスについて調べていて、次のような問題が出て来たのだそうです。

それは、「セックスが上手いと自認している男性の方がパートナーから嫌われ易い」という女性たちからの意見です。

最初これを聞いた時は、「テクニックの上手い男性の方が女性を喜ばせることができるはずなのに…」と疑問に思ったのですが、よく考えてみると、「なるほど」と納得できる心理学的なトラップに気づきました。

そのキーワードは、ビジネスの世界でもその必要性が指摘されている「アンラーニング(unlearning)」です。

「アンラーニング」は「学習棄却」などとも訳されます。環境の変化に応じて、過去に学習した知識、習慣、先入観などを捨て去るということ意味する言葉です。

変化の激しい現代社会では、かつて有効だった経営戦略などが通用しなくなることがよくあります。今日では、どのような業界でも、いわゆる「ヒット商品」の寿命は短く、次々に新しい商品を開発しなければなりません。

そんな時に、過去の栄光が忘れられず、過去の成功体験に固執して、新たな発想ができないのは致命的です。そこで、意識的に、これまで身に付けてきた思考パターンや思い込みなどを敢えて捨て去り、新たに学び直すことが必要になるのです。

セックスのベテラン 

これは、私たちのセックスにも当てはまることです。

私たち人間は「本能が壊れてしまった動物」なので、セックスにおいても、本能にまかせてさえいれば自動的に上手くできるというものではありません。

人間のセックスには「学習」が必要なのです。

ですから、自分も相手も満足するような互恵的なセックスができるようになるためには、経験から多くのことを学ぶ必要があります。そして、そうした経験を重ねることでその人らしいセックスのスタイルが形成されるわけです。

ですから、セックスについてほぼ白紙状態の少年少女には、何らかの「性教育」が必要となります。基本的な知識の欠如や誤った情報の学習が、彼らの性行動を歪んだものにする危険については、今更指摘するまでもないでしょう。

しかし、公教育における性教育が貧弱なものであったとしても、書籍やネットなどを通じて得られる性情報や、良質なポルノグラフィ、そして、家庭や友人から得る情報などは、貴重な「性的学習」の機会を彼らに提供しています。

そして、ほとんどの若者たちは、そこそこ正確な情報を手掛かりに、実地にパートナーとのボディートークを重ね、試行錯誤の中から効果的な性的技能を獲得してゆきます。

実技研修?においては、オルガズムが得られるか否かというような快感のバロメーターが、様々な試行へのフィードバックとなり、経験を重ねるにつれ、個人の性的技能は豊かな発達を遂げるわけです。

しかし、結婚などにより、同一のパートナーとの性的体験が長年にわたり持続すると、二人がそれぞれベテランであるが故の問題というものが生じます。

第一は、よく言われる「マンネリ」です。

いくら美味しいご馳走でも、毎日同じものばかり食べていれば嫌気がさしてしまいます。気心の知れたベテランどうしの秘め事は、どうしても得意技?(あるいは無難なパターン)の繰り返しになりがちです。これが食傷気味のマンネリ感を引き起こします。

第二の問題は、二人が成熟し老いるという、避けることのできない「変化」が生じることです。

こうした変化は、セックスをめぐる心理にも及びます。簡単に言えば、私たちの性的欲求は、加齢と共に衰えるのではなく、欲求の質が変化するのです。

若い頃とは一味違った性的体験、性的満足を求めるようになるわけです。年齢を重ねると、食べ物の好みも変わります。あれと同じことです。

print
いま読まれてます

  • 「俺はSEXが上手いんだ」という男ほど女性に嫌われる科学的な理由
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け