自分が成功したいがために、他人の失敗を祈ったり期待したりした経験があるという方、少なくないかもしれません。しかしそれでは自らの成功などとても期待できないとするのは、現役弁護士の谷原誠さん。谷原さんは自身の無料メルマガ『弁護士谷原誠の【仕事の流儀】』で今回、タイガー・ウッズのとあるエピソードを例に引きつつその理由を解説するとともに、身につけるべき思考習慣を紹介しています。
他人の成功を喜べるか
こんにちは。弁護士の谷原誠です。
ゴルフの2005年に行われた「アメリカンエクスプレス選手権」最終日のプレーオフでの出来事でした。相手がパットを外せば自分の優勝が決まるという場面で、相手がパターを打った瞬間、彼は、「入れ!」と念じたそうです。
あれ?おかしいですね。普通は、「はずせ!」です。はずしたら、自分が優勝するわけですから。
しかし、これには、理由があります。
ここでいう「彼」、とは、タイガーウッズのことです。彼は、「『入るな』、と思うと、そこからマイナスの戦いが始まる」と言ったそうです。もし「入るな!」と念じてパットが入った場合、彼は落胆することになります。すると、次のプレーもその落胆を引きずって戦わなければいけなくなります。
反対に、彼が「入れ!」と念じて、相手が外せば、優勝が決まるのであれば問題はない。そして、「入れ!」と念じて、パットが入ったとしても、落胆することはなく、次のプレーもポジティブに臨むことができる、というわけです。
なるほどー。そういう考え方なんですね。
この考え方は、スポーツの勝負事の世界のことで、自分には関係ない、と思いますか?いえいえ、とんでもない。私たちに関係大ありです。
上記の考え方を抽象化すると、次のような考え方になります。
「他人が失敗することにより自分に利益がある(自尊心が満足する)場合に、他人の失敗を祈ってはならず、むしろ他人の成功を祈るべきだ」
学生の場合は、他人がテストで悪い点を取れば「ああ、まだ下がいた」と自尊心が満足します。失恋中に、友達の恋が成就せず失敗すると、なぜか安心することがあります。仕事で同僚のプレゼンが失敗すれば、自分の企画が通る可能性がある、という場合があります。
これらの場合に、他人の失敗を祈ったことはないでしょうか。
「失敗しろ」と思うと、それは、自分が物事の失敗を願うことになってしまうので、自分の場合だけ成功しようと思っても、すでに一度失敗を祈ってしまっているため、ベストな状態で臨むことはできなくなります。他人のプレゼンの失敗を祈っておきながら、その後、自分のプレゼンが大成功するとは、とても思えません。
このようなことをしてしまう原因は、他人との比較により、自分の自尊心を満足させようとしているためです。だから、他人が失敗すると、安心するのです。この習慣を続ける限り、負のスパイラルから抜け出すことはできません。
「他人が成功し、かつ、自分も成功するのが最高だ」
という思考習慣を身につけることができるか、この点が最大のポイントとなるでしょう。全ては思考習慣です。
今日は、ここまで。
● YouTubeチャンネル『谷原誠【仕事の戦略】』
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