高経年マンションに住む親御さんをお持ちの方は、そのマンションが置かれている状況を把握しておく必要があるようです。今回の無料メルマガ『まんしょんオタクのマンションこぼれ話』ではマンション管理士の廣田信子さんが、住み慣れた自宅マンションの望まない建替えに精神的なダメージを受けるお年寄りのケースを紹介。さらに離れて暮らす親をそのような境遇に立たせないよう子供がすべきことを記しています。
親が建替えで住まいをなくすのは子供にも一大事
こんにちは!廣田信子です。
マンションの「建替え決議」は、長い間、建替えの検討をしてきた最終段階の手続きです。
建替えには、区分所有者、議決権の各4/5の賛成が必要だということは、みなさんご存知だと思います。建替えコンサルタントや事業者が入って、説明会やアンケートを重ね、4/5の確保はできるだろうと読めてから招集されるものです。ここで否決されたら、すべてが終わりですから、慎重に準備されます。
通常の総会と違って、建替え総会の招集は、総会の日の2カ月以上前におこなわなければなりません。そして、その時配布する議案書には、
- 建替えを必要とする理由
- 建替えをしない場合に建物の維持に係る費用
- 修繕計画がある場合はその計画書
- 積み上がっている修繕積立金の額
を記載しなければなりません。その上で、総会の1か月前までに、議案書の内容を説明する説明会を開催しなければなりません。
ただ、現在では、この説明会で説明される内容を、ここではじめて知らされた…ということはほぼないと思います。それ以前の説明会や総会では、反対意見や様々な疑問の声が大きいので、建替え決議なんて無理だと思っていたところ、建替え総会が招集され、びっくりされ方からの相談があります。
当然のことながら、建替えを進めたい理事会やコンサルは、反対の方に個別で丁寧に説明し、安心してもらえるように力を尽くすでしょう。昭和的な発想で、反対と声を上げていた方が、建替え時の条件が有利になると思っている方も、いるかもしれません。で、管理組合はそんなことはできませんが、コンサルタントや事業者は、建替え決議を何とか成立させるために強固な反対者が出す条件を内密に飲むこともある…と聞いています。こういったことが、住民間の不信感を呼ぶことにもなるのですが…。
反対者がいて建替え決議は無理だろうと思っていたら、建替え決議の招集があり、説明会が開催され、もう建替え決議が通ることが決まっているかのように説明される。このままでは建替え決議が通ってしまう。長年住み慣れたこのマンションに住めなくなる…と思った高齢の方は途方に暮れます。
建替えの理由やそのための説明は、どうしても市場価値や金銭的な問題に偏ります。高齢になって、思い出がある自分の家に住み続けられなくなるということが与える精神的なダメージについては安易に扱われがちです。建替え総会前の説明会で、もう止められないところまで来ている…と思った方の精神的なダメージは大きいでしょう。あんなに反対の人がいたはずなのに…みんな賛成に回ったのだろうかと、周りも信じられなくなります。