もはや倒錯。ホンマでっか池田教授が指摘する「ビーガン」の傲慢

 

人類は雑食性の動物であったが、肉を食べるようになって脳が大きくなった。人類以外の類人猿(オランウータン、ゴリラ、チンパンジー)も植物食を基本とする雑食性で、動物も食べるけれども、人間的な感覚で言えば動物性たんぱく質も少しは食べるベジタリアンである。

チンパンジーと約600万年前に分岐した人類の祖先も基本的にベジタリアンであったと思われる。サヘラントロプス、オロリン、アルディピテクス、アウストラロピテクスと連なるホモ属以前の人類の成人の脳容量は500mlを超えることはなかった(約400mlのチンパンジーとさして変わりがない)。

アウストラロピテクスからホモ属が分岐する少し前のアウストラロピテクス・ガルヒ(約250万年前)あたりから肉の摂食量が増えて、ホモ属になった途端に脳容量は飛躍的に増大した。最も原始的なホモ・ハビリスで650ml、ホモ・エルガステル900ml、ホモ・エレクトス1200mlとどんどん大きくなり、現生人類(ホモ・サピエンス)では1350ml、ネアンデルタール人は1450mlである。

ネアンデルタール人の脳容量が現生人類より大きいのは、肉食の依存度がより高かったからという説もある。ちなみに、約200万年より少し前に、ホモ属に進化するアウストラロピテクスから分岐したパラントロプスはおそらく完全な植物食で、脳容量は500mlであった。

脳組織の50~60%は脂質でそのうちの3分の1はアラキドン酸やドコサヘキサエン酸といった多価不飽和脂肪酸で、これは植物には余り含有されておらず、肉や魚に多く含まれているため、脳の構造と機能維持には動物食は欠かせないのである。そのことを思えば、ベジタリアンはおそらく長生きしない。長命のベジタリアンというのは聞いたことがない。

ビーガンが肉を嫌うのはビーガンの勝手で別に文句はないけれども、人間の本来の食性を考えれば、肉を忌避するのはむしろ不自然なのである。生態系を構成する生物は植物(生産者)、動物(消費者)、菌類(分解者)である。生産者は水とCO2を原料として主として太陽光のエネルギーで、炭水化物を作って生きているので、他の生物を食べることはない。ビーガン的には最も倫理的な生物ということになるのかもしれない。動物は植食性、雑食性、肉食性と食性は3つに分けられるが、ビーガンの倫理をあまねく適用すると、ライオンも植物だけ食って生きろということになりかねない。(メルマガ『池田清彦のやせ我慢日記』より一部抜粋)

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