なぜ自民党と争わない?『枝野ビジョン』外交・安全保障の危険性

 

(3)過剰な対米依存を脱して東アジア多国間対話を

さてそのような方向に進もうとすれば、当然にも外交・安全保障政策全般についても旧来の延長ではない発想の転換が必要になる。

日米関係は今後とも日本外交の基軸であるけれども、そのことは冷戦時代そのままの過剰な対米依存をそのまま続けて行くこととは別問題である。

まず1つには、我々は、活力にあふれ、ますます緊密に結びつきつつあるアジア・太平洋の全体を、日本が生きていく基本的な生活空間と捉えて、国連、APEC、東アジア、ASEANおよび北東アジアすなわち環日本海という重層的な多国間地域外交をこれまで以上に重視し、その中で日米、日中はじめ2国間関係を発展させ成熟させていく必要がある。そのような観点からすると、ASEAN拡大外相会議や安全保障に関するASEAN地域フォーラム(ARF)に積極的に参加するだけでなく、北東アジアでもそれと同様の多国間の信頼醸成と紛争予防、そして非核地帯化のための地域的安保対話システムを作り上げ、並行して北朝鮮やロシア極東部を含む多角的な経済協力を推進していきたい。

(4)日米安保条約改定による対等な対米関係

そのような努力を通じて、まずいわゆる「極東有事」が発生しない北東アジア情勢を作り出していく。それが、沖縄はじめ本土も含めた米軍基地を縮小し、なくしていくための環境づくりとなる。私はそのような条件は次第に生まれつつあると考えている。すでに米韓両国からは、朝鮮半島の休戦協定を恒久的な和平協定に置き換えるための南北と米中の4者会談が呼びかけられている。かつての戦争当事者同士によるその会談が成功を収めた後には、さらにそれをロシアと日本を加えた「6者協議」の枠組みへと発展させ、米中露日が見守る中で南北が相互理解と経済交流の促進と将来の統一をめざして対話を継続するよう促すのが現実的である。そして、その6者とは実は、日本海を囲む北東アジアの関係国すべてであり、朝鮮半島の問題だけでなくこの地域の紛争問題や資源の共同管理、多角的な経済交流などを話し合っていく場ともなりうるだろう。

そういう国際環境を日本が自ら先頭に立って作り出し、成熟させていくことができれば、その進度に応じて、沖縄・本土の米軍基地の整理・縮小・撤去と「常時駐留なき安保」への転換を図ることができる。私は、2010年を目途として、日米安保条約を抜本的に見直して、日米自由貿易協定と日米安保協定とを締結して、日米関係を新しい次元に引き上げつつ、対等なパートナーシップとして深化させていくことを提唱したい。

高野孟さんのメルマガご登録、詳細はコチラ

 

print
いま読まれてます

  • なぜ自民党と争わない?『枝野ビジョン』外交・安全保障の危険性
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け