なぜ自民党と争わない?『枝野ビジョン』外交・安全保障の危険性

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先日掲載の「ツッコミどころばかり。立憲・枝野幸男代表『枝野ビジョン』に抱く違和感」での、枝野幸男氏が上梓した『枝野ビジョン 支え合う日本』の中の一部についての辛口とも言える評論が一部で話題となった、ジャーナリストの高野孟さん。今回高野さんはメルマガ『高野孟のTHE JOURNAL』で、枝野氏が同書で展開した「外交・安全保障論」にも「基本的な概念のレベル」で混濁があると指摘、とりわけ枝野氏の日米関係を巡る認識を強く批判しています。

【関連】ツッコミどころばかり。立憲・枝野幸男代表『枝野ビジョン』に抱く違和感

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※本記事は有料メルマガ『高野孟のTHE JOURNAL』2021年6月7日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール高野孟たかのはじめ
1944年東京生まれ。1968年早稲田大学文学部西洋哲学科卒。通信社、広告会社勤務の後、1975年からフリー・ジャーナリストに。同時に内外政経ニュースレター『インサイダー』の創刊に参加。80年に(株)インサイダーを設立し、代表取締役兼編集長に就任。2002年に早稲田大学客員教授に就任。08年に《THE JOURNAL》に改名し、論説主幹に就任。現在は千葉県鴨川市に在住しながら、半農半ジャーナリストとしてとして活動中。

外交・安保政策では自民党と争わない?――立憲・枝野幸男氏『枝野ビジョン』への違和感

枝野幸男=立憲民主党代表の新著『枝野ビジョン 支え合う日本』の第1章『「リベラル」な日本を「保守」する』について、前々号で論評した。「ずいぶん手厳しいですね」といった感想もいくつか寄せられたが、それに対しては、「厳しいとか厳しくないとかいうことではなくて、基本的な概念のレベルで混濁があるのが我慢できなかったのです」と答えてきた。

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同書第11章「地に足の着いた外交・安全保障」についても、私の視点は同じで、「基本的な概念のレベル」で混濁があることが問題であると思う。

外交・安保は中心的対立軸ではない?

この章の冒頭の1行はこうである。

「私は、短期的な外交・安全保障政策について、政権を競い合う主要政党間における中心的な対立軸にすべきではないと考える」

え~っ、何これ?どうして「外交・安保では自民党政権と争わない」と最初から決め込んでしまうのか。というか、逆に、ここでこそ保守に対するリベラルの対抗軸を突き出さなくて、一体何のための野党第一党なのか。

なぜそう考えるのかについての枝野の説明は、こうである。

▼外交・安全保障政策はわが国の独自の判断や意思とは関わりのない、他の主権国家の意思や行動によって決定的な制約を受けるという特殊性を持つ点で、他の政策分野と根本的に異なる(P.238)。

▼それを踏まえれば、外交・安全保障の分野において大切なことは、国家としての揺るぎない基本方針を踏まえつつ、わが国が「何を目指すのか」「何ができるか」を強く意識することである(P.239)。

▼外交・安全保障政策を真摯に考えれば、短期的に示し得る選択肢は、一見すると大きな違いにはならない。新しい立憲民主党の綱領も「健全な日米同盟を軸に」とその基本方針を明記しており、私はそれを進展させたいと考えている。

▼それでも、中長期的には「何を目指していくのか」によって、将来大きな違いとなり、国民生活を大きく左右する。私は、日米同盟を基軸としながらも、米国に対し地位協定の改定を粘り強く働きかけていく。……辺野古基地の建設を中止し、普天間基地の危険除去に向けた新たな協議を、米国に丁寧に求めていく。核兵器禁止条約について、……まずはオブサーバー参加などの余地がないか、米国等との調整を始める(P.240)。

デタラメと言っていいほどの論理的大混乱である。

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