欧米と国連が主導する「中国への制裁」がまったく機能していない真の理由

 

欧州各国に至っては、欧州委員会や独仏英などの主要国は挙って、アメリカの国際社会への復帰と原理原則である人権擁護という旗印の下、アメリカが掲げる対中制裁と包囲網の形成に賛同していますが、実際には、すでに出来上がり、欧州各国の経済に深く入り込んでいる対中依存体制を急速に変革するのはほぼ不可能ととらえられ(特にドイツ経済)、制裁に賛同しつつも、中国との取引はやはりやめられず、外交面でのアメリカに対する主導権争いというプライドも加味されて、ここにも厳しい対応が取りづらいSanction Holeが出来上がっています。

そして日本に至っては、台湾をめぐるコミットメントやクアッドへの積極参加、平和で開かれたインド太平洋地域のコンセプトと、アメリカとともに対中包囲網の中心的な立場から強硬的な姿勢を取っているかと思いきや、実際には制裁には参加していません。

それは、地理的に隣接しており、同エリアの経済圏の大国同士という特殊事情があることと、対中貿易が占める割合が非常に高く、短期間で中国を代替できるような貿易相手は存在しないという現状もあって、中国切りには踏み切れません。

そこには、今後も中国の経済・市場は伸び続けるという予想と、米欧とは異なり、先述のように中国は“隣にある巨大市場”であることと、安全保障上も、有事の際には真っ先に標的になりうる直接的な危険性に直面しているという事情もあり、【日米外交が基軸】という普遍の立場を取りつつ、【しかし、中国とも友好関係を築いておかなくてはならない】という2面戦略をせざるを得ないという難しいかじ取りを必要としています。

日本の置かれる立場は、Sanctionの穴とまで呼べるかわかりませんが、中国の脅威は認識しつつも、同時に魅力にも憑りつかれ、decisiveな立場はとれないというのが現状でしょう。

ゆえに、クアッドや「平和で開かれたインド太平洋地域」などの包囲網を安全保障上は構築していますが、米主導で発動されている対中制裁は実際には穴だらけで、効果はでていないと見るべきかと思われます。

そして、そこには常に、制裁破りという別のholeもあります。

中国に関していえば、ロシアやイランがパートナーとして存在していますし、実利主義のASEAN諸国も、中国の経済力に阿っている(おもねっている)ということから制裁は機能しません。

そう【捨てる神あれば拾う神あり】ということでしょうか。

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