“欧州最高の知性”が提示した「メディアの毒牙」から逃れる手段とは?

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欧州最高の知性と称されるジャック・アタリ氏の最新刊『メディアの未来』が話題を呼んでいます。サブタイトルに「歴史を学ぶことで、新聞、雑誌、ラジオ、テレビ、SNSの未来は導き出せる」と謳う本書ですが、我々はそれらのメディアと今後、どのように向き合ってゆくべきなのでしょうか。今回のメルマガ『ジャーナリスティックなやさしい未来』では、毎日新聞や共同通信への勤務経験を持ち、要支援者への学びの場を提供する「みんなの大学校」を運営する引地達也さんが、「社会倫理」をキーワードとしてその方法を探っています。

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「メディアの未来」を日常生活の倫理から希望を見出す

最近刊行されたジャック・アタリ著『メディアの未来』(林昌宏訳、プレジデント社)は人類のメディア史を振り返りながら、今起こっている現状の必然性を説き、未来のメディアを予測している内容である。

そこには悲劇的な現状をあぶりだしながら希望の光も見せてはくれているが、現状のメディアを取り巻く世界、もしくはメディアに取り巻かれている社会を見渡すとその光は仄かで儚く、悲観する気持ちになってくる。

それでもなお、私たちは前に行かなければいけない。

明るい未来に向けて、私たちはどこに向かえばよいのだろう。

その答えとしても、私が進めていきたいのが、支援が必要な人に向けてのメディア教育なのか、と思う。

メディアの使い方ではなく、メディアとどう向き合えばよいかを考えられるようにする社会倫理の感覚を養うこと、それは私たちが人というか弱い存在であることの自覚から始まるから、哲学的な問いかけも必須だ。

日本経済新聞が国内主要企業の社長100人を対象に3か月に1度実施している「社長100人アンケート」で、社員のリスキリング(学び直し)に「取り組んでいる」と答えた企業が67.6%だったことが分かった(10月4日同紙参照)。

これは仕事を充実させるためには経験値だけではなく、その社会性を磨くためにもよい風潮だと感じながらも、その内容は少し気になる点もある。

つまり、その内容は、「デジタル・プログラミング」が75.5%でトップで、「語学」が57.4%、「統計・データ解析」が56.4%、「マーケティング・経営」が56.4%。

これは文字通りスキルを伸ばすことに重点を置いており、実践に直結した「学び」が優先されている。

これらのスキルを身に着け、それを社会に結びつけ、発信し、つながっていくには、幅広い視点と確固たる倫理規範のようなものが必要であるが、この分野への言及も、ましては「学び直し」も積極的ではないようだ。

メディアでつながる社会において、スキルは可視化しやすいしわかりやすい。社会の中で自分の価値を上げるには有効であろう。

その上で考えてほしいのは、そのスキルがどのように利用され社会にとって役立つのかを判断する基礎の部分。

これが社会倫理であり、社会経験を経た「大人」だからこそ、倫理を深く考え、スキルと倫理が一対であると気づき、そこから指導側として後進の教育にもつながるのではないかと思う。

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