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2.個人の変化が国の変化につながる

大きな時代のうねりを捉え、時代の変化を予測しても、非力な個人に何ができるだろうか。そんな疑問を持つ人も多いだろう。

確かに個人の力は弱い。それでも、変化が小さな変化から起きるものなら、個人の考えや行動が変化を誘発する可能性もある。

国家と企業は良く似ている。国家も企業も戦略で動いている。その前提条件は、時代の変化だ。多くの場合、共通した情報を見ているし、共通した変化を予測している。

共通の価値観を持つ世界の中では、組織の大小はあっても、共通する思考パターン、行動パターンを持っているものだ。日本の組織では新しいことに挑戦するよりリスクヘッジを優先することが多い。同調圧力は個人にも働くが、組織にも働いている。米国や中国では、日本人とは異なる行動原理で動いている。

こうした違いは、個人の思考パターンの違いに基づいている。日本人、米国人、中国人は、それぞれ思考パターンが異なるし、それが組織にも反映される。

今回、ロシアのウクライナ侵攻に関連して、プーチン大統領は「国境は常に変化しており、力のある者がそれを決める」と発言した。法より力が優先するという考え方である。こうした発想は、日本でも戦後間もない頃には存在していたし、ヤクザ組織の中にも存在する。

現在の日本人にとっては異常な思考だが、独裁国家ではそれほど突飛な考え方でもない。そして、独裁国家は意外に多いのだ。

我々の常識が世界標準ではないし、国によって歴史や文化、宗教等は異なるのだから、思考パターンが異なるのも当然だ。

個人の意識が変化することで、国家の意思決定も変化することがある。個人が不安になれば、国家も不安になる。個人の感情や気分は他人に伝染し、それが組織に影響する。そういう意味で、現在の中国は興味深い。国民の感情は大きく変化しているし、多分それが国をも動かしていくだろう。

気分や感情の変化が周囲に影響を与えることは、ファッションの基本であり、その原理は政治や経済にも共通している。エリートはロジカルな思考を優先するが、実際に時代を変えるのは感情であることも多いのだ。

3.自分の内面を見つめて生きる

世界は強大な権力で動いている。個人の力は非力だ。その中で、組織を否定し、あくまで個人を優先するという考え方もある。

釈迦は苦痛に満ちた世の中に対して、徹底的に絶望した。形あるものは全て滅びると理解し、目に映る世界も無常なものとした。そして、極楽浄土を想い、悟りを開こうとした。自分の外部を変えようとするのではなく、自分の内面を変えようとした。

これも一つの考え方だ。どんなに世界が変化しようとも、一人一人が自分のリズムで生きていく。世界中の人々が他人に干渉せず、内面を見つめて生きていけば、敵も味方もなくなり、戦争も起こらない。

時代の変化に対応するマーケティング発想ではなく、自分の信念に従って生きていくという発想である。

日本も平安時代には、末法思想の中で俗世間から離れて生きていく隠遁の思想が流行した。戦争や疫病、自然災害等により、利益追求の生き方、考え方が行き詰まれば、内面に向かう思想が心の安定を支えるのだろう。

現在、中国の若者は社会に絶望し、寝そべり族(タンピン族)を目指す人が増えている。これも乱世の思想といえる。

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