日本という国を真剣に考えるがゆえに展開されていると感じてしまいがちな、政府の支出に対するバラマキ批判。しかしこの「バラマキ批判」に関しては、全否定ともいうべき見方もあるようです。今回のメルマガ『藤井聡・クライテリオン編集長日記 ~日常風景から語る政治・経済・社会・文化論~』では著者で京都大学大学院教授の藤井さんが、「バラマキ批判」が百害あって一利なしである理由を分かりやすく解説。さらに国民の実質賃金を上げ国の経済規模を拡大させるために、我々が政府支出に対して取るべき態度を提示しています。
(この記事はメルマガ『藤井聡・クライテリオン編集長日記 ~日常風景から語る政治・経済・社会・文化論~』2022年10月4日配信分の一部抜粋です)
この記事の著者・藤井聡さんのメルマガ
財政についての「バラマキ批判」、それは一見合理的に見えて実は合理的な財政を破壊する「百害あって一利無し」な呪いの言葉
岸田総理が、物価高を受けて経済対策のために経済対策を行う見通しと報道されています。岸田総理が所信表明で「日本経済の再生が最優先課題だ」と述べ、物価高・円安への対応や、賃上げを重点課題に挙げたからです。これについて30兆円規模でとの声もあると報道されていますが、産経新聞でも読売新聞でも、その支出が「バラマキであってはいけない!」という論調が強調されています。
曰く、
バラマキに陥らず、苦境にある中小企業や、困窮した人への支援など必要
「所信表明演説 経済再生へ具体的な道筋示せ」読売新聞
与党では編成前から巨額の財政出動を求める声が強まり、バラマキ型の対策が一層の財政悪化と市場の混乱につながる懸念もはらむ
こういう主張は、一見、全くもって正しいように思います。
一方で、このバラマキ批判と似たものとして、財政には、いわゆる「ワイズスペンディング」という考え方があり、政府がオカネを使うならば、賢く使う方が良い、という考え方です。
当方はこの概念を、いろんな局面で好んで使用しています。
この両者は一見同じ事を言っているように見えますから、ワイズスペンディングを強調する当方は、バラマキ批判をしているのと同じだから、バラマキ批判という言葉も当方よく使うのかというと……全くそうでは有りません。
なぜなら、論理的には両者は同じに見えても、実質的には両者の間には天と地ほどの差があるのです。
そもそもワイズスペンディングの考え方は「どうせオカネをつかうなら」という前提があるのですが、「バラマキ批判」は、実は、「無駄だと思えるものにはカネを使うな」という緊縮的思想が明確に入っているのです。
つまり、ワイズスペンディングは「何に払うべきか」というポジティブな規範ですが、バラマキ批判は「何には払ってはならないか」というネガティブな規範なのです。
もちろん、世の中には、ポジティブとネガティブしかないのですから、両者は論理の構造としては全く同じ事を言っている、と言うことはできます。
この記事の著者・藤井聡さんのメルマガ