元国税調査官が解説。なぜ不動産会社の「タックスヘイブン脱税」はバレてしまったのか?

 

大充実。タックスヘイブンの「脱税ヘルプサービス」の実態

次にもっと悪質なタックスヘイブンの利用法について説明しましょう。富裕層や大企業の多くは、なかなかタックスヘイブンに「移住」することまではできません。だから、彼らは籍だけをタックスヘイブンに置いたり、タックスヘイブンにペーパーカンパニーを作っていろんな名目で送金したりするのです。冒頭にご紹介した脱税事件も、シンガポールにあるペーパーカンパニーに送金していたのです。

しかし、現在の先進諸国の法律ではそれはなかなかできないようになっています。先進諸国ではタックスヘイブン対策として「実態のない会社との取引は認めない」という取り決めをしているからです。

が、富裕層や企業の中には、法の抜け穴をついているものもたくさんいるのです。巧妙に、「タックスヘイブンに会社の実態がある」というように見せかけるのです。具体的に言えば、タックスヘイブンの中に、オフィスを構え従業員も雇うのです。「会社の実態」を作るため、最低限の条件をクリアするのです。

そして、タックスヘイブン側も、そういうものに手助けをしています。タックスヘイブンには各国から集まってくる企業や資産家を、守るためのサービスをする会社も数多く存在します。それらのサービス会社は、多国籍企業のオフィスをタックスヘイブンに開設し、従業員もいるようにして、本社としての実体があるかのようなアリバイ工作をしてくれるのです。

ケイマン諸島、香港などのタックスヘイブンでは、日本人向けの銀行口座開設や法人設立の代行をしてくれる業者もたくさんいます。「タックスヘイブン 法人設立」などの言葉で検索すれば、そういう業者はすぐに見つかるのです。

これらの業者は、法人設立をした場合に、現地で事務所の確保など会社の体裁を整え、ちゃんと社員もいるような形態に見せかけてくれます。「会社の実態がない」として、税務当局から否認されないようにです。つまりは、現地の業者が偽装工作をしてくれるということです。これらの業者は弁護士と提携し、法律的な面でもぬかりがないものです。

冒頭でご紹介した大阪の不動産会社にも、現地の手引き役がいました。海外在住の税理士が、脱税スキームをすべて作っていて、大阪の不動産会社はそのスキームに従って脱税をしていたのです。

この脱税事件は、むしろこの税理士が指南役となっていたようです。この大阪の不動産会社だけじゃなく、ほかの会社にも同様の手口で脱税を指南していたからです。

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