利用シーンと客単価別で3業態を整える
野乃鳥では現在、展開している業態がざっと3つに分かれている。
まず創業の店舗は「本店」となりカウンター6席の完全予約制で、客単価は1万2,000円くらい。東京・日本橋の「野乃鳥」は36坪30席で8,000円前後。これらは「THE野乃鳥」に位置づけている。
次は「野乃鳥スタンダード」というカテゴリー。大阪のなんば、梅田といった繁華街や茨木、千里丘といった住宅街で展開していて3,500円から4,500円前後。
さらに、コロナ禍にあってオープンした「KOBE YAKITORI STAND」という若者向けの業態がある。この店をつくったきっかけは同社が兵庫の鶏肉にこだわって営業していることから、神戸・三宮駅高架下の商業施設に出店するオファーがあった。そこで、若い人たちに気軽に焼き鳥とワインを楽しんでいただこうとビストロ風にした。2021年1月オープン。客単価2,500円。同じバージョンで昨年4月東京・新宿三丁目にオープン。同店の客単価は3,500円。
これまで同社の店の客層は男性7割、女性3割であったが、このバージョンは女性7割、男性3割。同社ではこれまで中高年向けの店をつくっていたが、これからの経営環境を考えるとMZ世代(20代から30代半ば)に向けた取り込みは的を射たものと言えるだろう。
同社では三宮の店の繁盛がきっかけとなり東京で出店するオファーを得た。時代はコロナ禍であるが、野網氏は「これからは東京から発信することがチャンスになる」と考えた。今年は人形町と虎ノ門ステーションタワーに出店する計画があり、これから東京をベースに考え、代表である野網氏が活発に動けるように本社や関西の仕組みをつくり込んでいるという。
このように「焼き鳥居酒屋の高度化」は市場環境の変化と良質の食材調達の在り方を日ごろから追求している経営者によってもたらされている。このような「高度化」は外食の経験値が高まっている消費者から大いに歓迎されることであり、新しい外食のトレンドをつくり上げている。
image by: 千葉哲幸
協力:株式会社けむり , 株式会社 野乃鳥