プーチンに武器供与するか否か。習近平が自ら陥った「危険なジレンマ」

 

岸田首相のキーウ訪問で日本が放棄してしまったもの

個人的には、ウクライナに対するアメリカの対応と同じく、台湾に装備と訓練を授けても、アメリカ軍は中国軍との交戦は回避すると考えています。

中国の動きが活発化し、ポスト・ウクライナの世界の主導権を握るべく動き出した今、「中国からロシアへの武器供与の有無」に関わらず、確実に世界の分断が加速することが分かるかと思います。

その分断の度合いと姿は、いくつかのIFによって占うことが出来るかと思います。

それは【ロシアがその時点でどのような状況に置かれているか】【プーチン政権は存続しているのか?】【欧米諸国はプーチン政権の存続を黙認するのか?とことんロシアの弱体化を図り、プーチン大統領を退陣させ、親欧米ロシアをつくろうとするのか?】という不確定要素と、【インドに代表されるグローバル・サウスの動向はどうなっていて、グローバル・サウスの中でインドの影響力の大きさはどれくらいになっているか】という不確定要素です。

前者において仮に欧米諸国が“プーチン大統領を打倒し、親欧米ロシアを作ろう”というようなことを、まだ本気で考えているのであれば、世界はまたイラクやアフガニスタンで経験しているような悲劇を見ることになると思います。

しかし【プーチン大統領との共存】を模索することも恐らく難しいと考えます。

その仲介を行って、関係改善に努める役割を、これまでの日本は果たせたはずなのですが、今週、強行された岸田総理のウクライナ訪問を機に、日本はNATOに就き、ロシアと中国との関係を切ったというように理解されたことで、中ロに対する影響力を放棄したように感じます。

緊張感が張り詰める北東アジアのど真ん中に位置する日本の今後の安全保障方針を考えた際、「日本が持つ特別な立場と立ち位置」を捨てる価値はあったのでしょうか。

その答えはそう遠くない時期に明らかになるかと思います。

以上、国際情勢の裏側でした。

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