日本の製造業「凋落」の象徴。なぜ東芝は中国企業に買収されてしまったのか?

 

「中韓メーカーが台頭」という大ウソ

2021年の家電シェアでは、日本の家電メーカーは、パナソニック1社しか入っていません。しかも2002年の家電売上で10位以内に入っていた日本の6社のうち、4社は、すでに経営母体が変わっています。サンヨー、シャープは他企業に買収され、ソニー、東芝は家電部門の一部を売却しているのです。

2016年に、経営再建中のシャープが台湾の鴻海グループに買収されたというニュースは、日本中に衝撃を与えました。また同年、東芝の白モノ家電を担っていた「東芝ライフスタイル」は中国企業の「美的集団」に買収されました。しかも買収金額は、わずか500億円程度でした。かつて世界中を席巻していた日本の家電メーカーの大半がすでに他国の企業の傘下に組み込まれているのです。急激な凋落ぶりです。

この2つのランキングを見比べると、なぜ日本の家電メーカーが衰退したのかの理由が見えてきます。2021年の順位を見ると、意外な事実が浮かび上がってくるのです。欧米のメーカーは、日本のメーカーと違ってしっかり頑張っているということです。

家電の分野で、日本のメーカーは軒並み苦戦していますが、それは中国、韓国の台頭が主要因だとされてきました。だから、世界の家電は、中国、韓国のメーカーに席巻されているようなイメージがあります。が、実は、そうではありません。欧米のメーカーは、2002年には3社しか入っていませんでしたが、2021年に4社が入っています。むしろ、日本のメーカーに席巻されていた1990年代ごろと比べれば、シェアは伸びているのです。

2002年に10位以内に入っていたアメリカのワールプール、スウェーデンのエレクトロラックは、いずれも現在も10位以内に入っています。オランダのフィリップスははずれましたが、新たにドイツのBSH、フランスのSEBグループがランクインしています。6社もあった日本のメーカーがパナソニック1社になってしまったのとは、対照的です。

つまりは、この20年の世界の家電シェアは、「中国、韓国のメーカーが台頭した」のではなく、「日本のメーカーが凋落した」のです。

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