世襲議員「増加」の悪影響も。導入から30年を迎える小選挙区制の功罪を総括する

 

細川と河野、それぞれの「言い分」

議事録が公開されていないので、いくつかの報道をつなぎ合わせるしかないが、細川はおおむね次のような趣旨を述べた。

(1)1996年にこの制度による初の衆院選が行われ、当時は3回くらいの衆院選を経て政権交代が実現すると期待したが、実際には2009年の政権交代まで5回を要した。それでも、この制度の下で政権交代を経験することが出来たので、制度そのものは機能した。

(2)また、中選挙区制の下では〔リクルート事件をはじめ〕金権腐敗や派閥政治の横行が問題視され、それをなくすには制度改革が必要だとされたのだが、実際にその面で状況は大きく改善された。その意味で、一部にある中選挙区制復活論には賛成できない。

(3)〔当時は小選挙区制にすれば2大政党制になると盛んに言われたが〕2大政党制を必ずしも求めたわけではなく、穏健な多党制が日本の国民性に沿っていると思う。

(4)〔政策本位の選挙になるはずだったのに政治家個人の政策立案能力は落ちている?〕制度変更がそれを引き起こしたわけではない。政界だけでなく経済界でもそういった指摘はあり、政策立案能力の減退は時代の流れだ。

(5)〔小選挙区で敗れても比例で復活当選できる〕重複立候補は惜敗率が高い人が議席を得られるメリットがある……。

これに対して河野は、次のように語った。

(1)政党中心・政策本位にかけるという決心だった。しかし、30年経って今の政治を見た時、国民が政党・政策を選ぶ形になっているかどうか、ギャップを感じざるを得ない。政党が主張する政策を選んでもらう趣旨だが、有権者の本音は人を選びたい。そこが食い違っている。

(2)国民のニーズがこれだけ多様化しているから、2大政党で「白か黒か」というのは無理だろう。

(3)重複立候補も国民に支持されているか、もう一度世論に向き合う必要がある……。

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