同じことばが、文脈を阻害する
「無駄なことばは全部削る」というのは、文脈を追えるような文を重ねていくということでもあるのです。
広報の続きを見ていきます。
生徒も議員も始めはお互いに緊張していた様子でしたが、いずれも学校でもたくさんの意見を出してもらうことができ大変有意義な意見交換となりました。
ここも長い一文です。それは、「様子でしたが」の「が」と「意見を出してもらうことができ」の「でき」に、その原因があります。
「が」が接続助詞、「でき」が用言の連用中止法です。ともに、文の要素をつなぐ役目があります。
1)生徒も議員も始めはお互いに緊張していた様子でした(が)
2)いずれも学校でもたくさんの意見を出してもらうことが(でき)
3)大変有意義な意見交換となりました
という三つの要素を「が」と「でき」でつないでいるからです。接続助詞と用言の中止法をやめれば、文は短くなります。
結局「一文が長い」という共通点がある
生徒も議員も始めはお互いに緊張していた様子でした。
いずれも学校でもたくさんの意見を出してもらうことができました。
大変有意義な意見交換となりました。
単に文をばらしただけです。これをさらに、整理します。
生徒も議員も、初めは緊張していた様子でした。
しかし、各校からたくさんの有意義な意見が出されました。
とすれば、ほぼ趣旨を変えずに二つの文にすることができます。
「たくさんの意見」は「大変有意義」であったはずです。
「始めは」は「最初のうちは」という意味なので「初めは」とします。
同じことばを使うのは、そもそも文の構造がおかしいから
広報はさらにこう続きます。
高校生のみなさんから頂いた貴重な意見、提言が活かせるよう議会として取り組んでまいります。
頂いた貴重な意見、提言はとりまとめの上、市に提出いたしました。回答については次号に掲載いたします。
ここにも、
頂いた貴重な意見、提言
2がカ所あります。
議会としてしっかり取り組むために、「市に提出」したのです。この辺をまとめてみます。
高校生のみなさんから頂いた貴重な意見、提言が活かせるよう議会として取り組んでいきます。またこれらは、とりまとめて市に提出しました。回答については次号に掲載いたします。
「これら」などの指示語を使って、同じことばの繰り返しを避けるようにします。この段落に来て「まいります」「いたしました」「いたします」などの敬語が急に増えます。ここまでの流れに沿って、自然なことばづかいにしても問題はないように思います。
(メルマガ『前田安正の「マジ文アカデミー」』2023年6月5日号より一部抜粋、続きはご登録の上お楽しみください、初月無料です)
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