私がそういう強い気持ちを持てたのは、父を見ていたからかもしれません。父は90歳から97歳までの間にスキーで転んで3回骨折しています。普通であれば90を過ぎてスキーで骨を折ったら「俺ももう年だ。危ないことはやめよう」と考えるところです。ところが、周りがいくら「危険だからやめなさい」といっても父は聞きませんでした。
スキーをしたいという一心で、入院から10日ほど経つと、折れた右足にギプスをしたまま左足の屈伸運動を始めたり、バーベルを上げたり、食べ物の工夫をしたりして、奇跡的に骨をくっつけてしまいました。最後に骨折したのは97歳の時でしたが、これも治して99歳でモンブランを滑ったのです。
いくつになっても諦めなければ夢は叶うものなんだと思います。夢が叶わないのは、どこかで諦めてしまうからなのでしょう。
父は101歳で天寿を全うしましたが、最後まで大好きなスキーを続けました。サインを求められると、好んでこう書いていました。
「探求一筋」
人間、現状維持でいいのだと思ってしまうと、そこで成長が止まってしまいます。しかし、父は最後まで成長し続けていました。「もうこれでいい」という気持ちには決してなりませんでした。現状維持を拒み、昨日の自分を超えようとしていました。父は「諦める」という言葉を知らない人でした。
そうした父の生き方は、私にとっての最高の手本となっているのです。
※本記事は月刊『致知』2014年8月号 特集「一刹那正念場」より一部を抜粋・編集したものです。
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