立地はいいが耐震改修もできない高経年マンションが“大事にすべきもの”

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高経年マンションの再生への道のりはとても難しいものがあります。住民は年金暮らしの高齢者が多く、経済的な負担を強いることもできません。メルマガ『まんしょんオタクのマンションこぼれ話』の著者で一級建築士及びマンション管理士の廣田信子さんが、そのような高経年マンションの今後について語っています。

どう考えても耐震改修をして延命させるのは難しい高経年マンションの再生について悩んでいたら

どう考えても、耐震改修をして延命させるのは難しい高経年マンションがあります。

耐震改修に多額の費用が掛かるだけではなく、排水管からの漏水が絶えず、これを何とかしないと住み続けるのもたいへんなのです。

管理組合は、費用を借りて何とか排水管の更新をしたいと思っていますが実現しません。

このマンションに耐震改修をというのは難しいです。

場所は悪くないので、建替えによる再生を考えたいところですが、年金暮らしの人が多いこのマンションで戸当り2千万円を超える費用を負担するのは困難だと始めから論外です。

どう対応したらいいか悩んでいたら、ある専門家から下記のメールをいただきました。

2002年の区分所有法改正と「マンション建替え円滑化法」制定から20年。

建替えを含むマンション再生についての社会的なニーズと制度や事業手法の間に大きな乖離があることを日々実感しています。

その中でもとりわけ規模や立地の制約により保留床が生み出せないマンションの再生は、我々が優先して取り組むべき喫緊の課題だと考えています。

現在の区分所有法やマンション建替え法などマンション再生に関する法改正中でも、立地や規模、容積余剰などの理由から具体的な再生検討を諦めていた管理組合や区分所有者の皆さんに提示可能な選択肢が増えるものと考えています。

とは言え、制度ができても実際の再生が進まなければ画餅に終わってしまいます。

区分所有者の高齢化や工事費の高騰もあり、大きな経済的負担が避けられないこれからのマンション再生は困難な道のりです。

しかし、これから私たちが迎えようとしている社会の厳しさを考えると、真の意味で安心して住み続けることができる住まいこそが大切な基盤になるように思います。

そしてそれは施設や設備などハードではなく、住民間の緩やかな関係性や個人を支える共同体のあり方であるように思います。

その可能性をもっているのがマンションのコミュニティですよね。…と。

このメールに救われた気がしました。私も同じ思いです。

高齢者が自分たちのコミュニティを大事にしたいと思う気持ちが、損得勘定を超えたところでマンションを再生させることができるのではないかと思うのです。

image by: Shutterstock.com

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【著者】 廣田信子 【発行周期】 ほぼ 平日刊

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