「復讐心」こそが火種。どれだけ文明が発達しても世界から「戦争」が無くならない理由

Taiz,Yemen,-,22,Aug,2016,:,A,Child,From
 

ひとたび起これば多くの一般市民が犠牲になり、国土も荒廃するばかりの戦争。現在も世界の至る所で戦火が上がっていますが、そもそもなぜ戦争や紛争はなくなることがないのでしょうか。今回の『きっこのメルマガ』では人気ブロガーのきっこさんが、「どんなに文明が発達しても世界から戦争がなくならないのは人間が“復讐”が好きだから」といういう仮説を立て、古今東西のさまざまな「復讐譚」を紹介しつつその立証を試行。さらに小説や映画などの「復讐劇」と現実に相手に「復讐」することはまったくの別物とした上で、「復讐」の心こそが「戦争の種火」と結論づけています。

※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです

復讐するは我にあり

ロシアとウクライナの戦争は、今に始まったわけじゃなく、その根っこは30年以上も前の旧ソ連の崩壊にまでさかのぼる。イスラエルとパレスチナ(ガザ地区)の戦争も、今に始まったわけじゃなく、その根っこは100年以上も前にさかのぼる。そして、どちらの戦争も、これまで幾度となく繰り返されて来た。つまり、どちらの戦争にも、ひと言じゃ説明できない長くて重たい「憎しみの連鎖」が底流してるわけだ。

昨年10月に口火を切ったハマスの一斉攻撃も、イスラエル側は「ハマスが先に手を出した」と言うけど、ハマスにしてみれば、これまでさんざん市民を虐殺されて来たことへの復讐であり、悪いのは自分たちの土地に勝手に国を造ったイスラエルだという認識だ。そして、この100年以上にも及ぶ「憎しみの連鎖」が、どちらの国も自分たちの攻撃を「復讐」として正当化する基盤となってる。

そこであたしは、どんなに文明が発達しても世界から戦争がなくならないのは、古今東西、人間は「復讐」が好きだからだ、という仮説を立ててみた。あたしの大好きな『ギリシャ神話』は、数々の復讐劇によって成り立ってるし、これまたあたしの大好きなシェイクスピアにしても、四大悲劇の中の『ハムレット』と『マクベス』は絵に描いたような復讐劇だ。一般的に復讐劇とは見られてない『リア王』と『オセロ』にしても、復讐の要素が散りばめられてる。他にも『ジュリアス・シーザー』や『タイタス・アンドロニカス』なども復讐劇だ。

ルネサンス時代のヨーロッパ各国では、「悲劇」の中でも復讐の要素を含んだ戯曲を「復讐悲劇」と呼び、数多くの作品が上演されていた。こうした作品では善と悪とが明確に描き分けてあるため、「復讐=勧善懲悪」であり、復讐が果たされると観客は拍手を送った。そして、復讐を果たした主人公が悲しい末路を迎えると、今度は涙を流した。どんなに残酷な内容でもオペラや演劇による「復讐劇」は、大衆の娯楽だったのだ。

日本でも、奈良時代に成立した『古事記』や『日本書紀』には、史実なのか創作なのかは置いといて、文献上で日本最古の復讐劇「眉輪王(まよわのおおきみ)の変」についての顛末が記されてる。「眉輪王」は『日本書紀』での表記で、『古事記』だと同じ読みで「目弱王」と表記されてるけど、この「眉輪王」は、仁徳(にんとく)天皇の皇子の大草香皇子(おおくさかのみこ)と、履中(りちゅう)天皇の皇女の中蒂姫命(なかしひめのみこと)の間に生まれた男の子だ。

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