最初からボタンを掛け違えていた
さて、アベノミクスが最初からボタンを掛け違えた頓珍漢な政策構想であることについては、本誌は、安倍晋三がそれを言い始めた2012年秋の総選挙の時から指摘し続けているので、繰り返しを避けたいが、アベノミクスはそもそも、
- 日本は長期デフレに陥っている、
- デフレは「貨幣的現象」すなわちモノに対してカネが不足しているのであるから、日銀にカネをじゃんじゃん刷ってばら撒かせる。
- すると、クルーグマンが言うように人々は近い将来のインフレを予想して、今のうちに家や車を買うなど消費に走るので、たちまちデフレから脱出できる。
ーーという、浜田宏一や岩田規久男らリフレ派エコノミストの珍理論に立脚していて、その意味で始まる前から失敗が約束されていた。
彼らが「デフレ」と認識していた経済の停滞は、その3年前の2010年に藻谷浩介が『デフレの正体』(角川書店)ですでに解き明かしていたように、日本が他のどの国よりも急激に人口減少社会=需要減退経済に突入しつつあるという構造的な変化に全ての制度も政策も対応できていないことによるものである。
それを、統計数字だけ眺めて机上の空論を弄んでいる三流学者らがデフレと誤認し、しかも「お札をじゃんじゃん刷ればいい」という粗暴極まりない出鱈目な処方箋を出し、それを経済に疎い安倍が鵜呑みにして政権の目玉に仕立ててしまった。
当然、いくらやっても「2%の物価上昇」という目標は達成されず、それで困った日銀官僚が編み出した小手先の絆創膏的な弥縫策が、
▼「オーバーシュート型コミットメント」、
▼民間銀行が日銀に預ける当座預金の一部への「マイナス金利」導入、
▼「イールドカーブコントロール」、
……とかいったことだった。
こういうカタカナ言葉を専門家が振り回し、マスコミがその手先となって分かったような解説で目眩しを振り撒くと、一般国民はますます何がなんだか分からなくなり、その朦朧状態の中で「2%達成」はさらにどこまでも先送りされ続けて来たのだった。