小林よしのり氏が読み解く『ドラゴンボール』の秘密。戦闘漫画に潜む無意識と「鳥山明の戦争論」

 

『ドラゴンボール』は鳥山明版『戦争論』だ

わしが描いたのは、戦争のリアルである。具体的な本質である。

一方で鳥山明が描いたのは、抽象的だが、これも戦争の本質である。

ただただ戦争が好き、戦闘が好き、人を憎むのが好き、敵を倒したい、という願望が人間にはある。これが脳内でどんどん増幅していって、暴発していくというのは、プーチンだけに起こることではない。そんな意欲は、万人の中にあるのだ。

だからわしは意識的・具体的に、戦争というものは人類が生存し、国家が存在する限り、なくならないと描いた。

そして鳥山明は、わしと同じことを無意識的・抽象的に描いたのである。

戦いは決して終わらない。必ず戦争はある。人はそこから逃れられないのだと無意識のうちに鳥山は描いたのであり、それが本質なのだ。それだったらわしと同じと言えるのではないか。

ところが、自覚的にそれを描いたわしは散々非難されるが、無自覚に描いた鳥山は絶賛される。そこに何の矛盾も感じずにいられるのだから、大衆ってすごいものだと思うしかない。誰もがただひたすら無意識に任せていて、何も考えていないのだ。

別に鳥山明を批判するわけではない。鳥山は無意識の戦争願望を描いた漫画家である。そのことを誰も言わないまま「国民栄誉賞」とまで言っている大衆の欺瞞は、指摘しなければいけない。

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