なぜ若者は「みんな同じ顔に見える」アイドルにドハマリするのか?推し活巨大市場の核心「グループ売り」の行動経済学

 

韓国の芸能人やアイドルに自死が多いのはなぜか?グループ売りの功罪

ところで、OECD加盟38カ国で、つねに国民の「自殺率トップ」をキープしているのが韓国です。

2021年の10万人当たりでは、23.6人で断然のトップなのです。

第2位のリトアニア、第3位のスロベニヤに次いで、 日本も第4位 (14・6人)ですから、けっして低くはないのですが、韓国と日本の自殺率の高い共通原因には、自殺の専門研究者によれば「儒教」がかなり影響しているとも指摘されています。

「儒教」は中国の孔子がそのルーツですが、もともと五常(仁・義・礼・智・信)という徳性を拡充し、五倫(父子・君臣・夫婦・長幼・朋友)の関係性を重んじるものでした。

しかし、今日において、「社会主義」を標榜する独裁国家となった中国においては、あまり影響力を有していないのです。

むしろ、その根本理念である、「父権社会」「男尊女卑」「苦しいことにも我慢」「家柄偏重」「学歴偏重」「集団への帰属意識の強さ」……などなどは、日本や韓国に浸透度の高いモノとなっています。

とりわけ、韓国では高齢者の経済困窮による自殺の多さとともに、若年層の自殺も飛びぬけて多いのが、その特徴となっています。

驚かされるのは、芸能人やアイドルグループの一員として有名になり、大衆から憧れられる存在になってなお、命を絶つ芸能人が少なくないことなのです。

これは日本とは少し事情が異なるように見受けられます。

韓国芸能界は、日本の芸能界と比べ、競争の激しさが群を抜いているからだ──とも指摘されています。

たとえば、アイドルといえば、現在はグループ化しているために、個々のメンバーは他のメンバーに迷惑をかけられない──といった「我慢強い集団同調意識」も高く、長い期間の厳しいトレーニングに耐えきれずに脱落したり、事務所の経営サイドから有力者への「性的奉仕」を強要されるなど、日本以上にハラスメント度も高く、その強烈なプレッシャーが韓国芸能界では顕著とも指摘されているのです。

そうした事情が自殺に結び付くのに大きく影響している儒教的背景といわれているのです。

たしかに、こうした面では、韓国には儒教っぽい空気がよどんでいる気がします。

韓流ドラマを見ていても、同じ 「儒教」の「長幼の序」のとらえ方にしても、日本以上に神経が使われていることが窺えるからです。

日本にも「先輩・後輩」「長男優位」「先生と生徒」「親と子」といった序列はありますが、韓国では、目上の人に正式に礼を尽くす際は、目下の人間が目上の人間の前で膝をついて、土下座的対応をするのがふつうですし、目下の人間が目上の人の前で喫煙したり、飲酒の際には、顔を横にそむけて、その行為を片手で隠すような仕草まで行います。このへんは日常でも徹底されています。

また、韓流ドラマには、「家柄」や「家格」「学歴」「財産」「職業」といった事柄に、ひどく差別的な風潮が窺えますが、そこにもかなりの「男尊女卑」の底流性が見て取れることでしょう。

韓国と日本に「自殺」が多いのは、たしかに「儒教」に原因の一端があるという専門家の指摘は、あながち、うがちすぎだともいえないわけです。

しかしながら、日本とは比べ物にならないほどの非常に厳しい訓練に長期間耐え、勝ち上がってきたにも関わらず、韓国のアイドルグループの面々が有名になってから自ら命を絶つ──というのは、本当に非常にもったいない話に思えます。

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