なぜ若者は「みんな同じ顔に見える」アイドルにドハマリするのか?推し活巨大市場の核心「グループ売り」の行動経済学

 

アイドルの「グループ売り」は行動経済学に基づいている

ちなみに、こうした「認知バイアス」については、筆者の別ペンネームである「神岡真司」という名義で、つい最近 『脳のクセを徹底活用! 認知バイアス最強心理スキル45』(税込1650円)という本を清流出版から上梓していますので、ぜひ参考にしてくださればと思います。

さて、「アイドルのグループ化」が当たり前になった昨今の日本の芸能界です。

ではなぜ、アイドルは単独ではなく、グループ化して売り出したほうが、成功確率が高まるかについて行動経済学的な考察を行ってみましょう。

ここには、「認知バイアス」が実にうまく刺激されていることがお判りいただけると思います。

男女はお互いが恋愛対象ゆえに、思春期や青春期には、疑似恋愛対象としての異性の「アイドル(偶像)」という仮想現実的な存在が、商業的にも成立するのです。

しかし、従来のアイドルビジネスでは、つねに年齢がネックになりました。

外見重視ゆえに、年齢を重ねると、容色の衰えが致命的だったからです。

これは女性アイドルも男性アイドルも同じなのです。

思春期や青春期にアイドルだった人物が、オバサンやオジサン然となってしまうと、もはや偶像化しえないからなのです。

しかし、女性アイドルの場合は、グループとして売り出し、ファン層を多重化し、グループ構成員の数を増やしたり減らしたり、つまり個別の構成員の「卒業」や「新メンバー加入」を繰り返すことで、人気を長く保つビジネスモデルに発展させることが可能でした。

これが、モーニング娘やAKB48などのグループが、息の長い存在を保てるようになったゆえんなのです。

経済モデル「パレートの法則」にもヒント

こうしたビジネスモデルは、経済学的なモデルケースにおいても蓋然性をもちます。

たとえば、経済モデルでは、「パレートの法則」が知られます。

これは、「2割8割の法則」とも呼ばれ、2割の商品が売上全体の8割を占めている、2割の優秀な社員と6割が普通の社員で2割が働かない社員で構成されるといった組織の 「262の法則」 としても有名です。

それゆえ「働きアリの法則」「バラツキの法則」とも呼ばれるのです(この法則はイタリアの経済学者パレートが「冪乗則(べきじょうそく)」として提唱)。

アイドルグループもこの例に漏れず、2割程度の主力人気メンバーが8割のファン層を獲得している──といった現象もあることでしょう。

また、アイドルグループは、2割8割の 「パレートの法則」 とは反対方向で生じる 「ロングテールの法則」 も機能させている──ともいえるのです。

ロングテールとは「長い尾」のことです。

普段は売れない商品でも、その集積を合計すれば2割の人気商品の売上をも上回るという「大量在庫による売上確保」のことを意味します。

従来は、ちっとも売れない商品を大量に店舗に揃えるのは、物理的限界がありました。

しかし、通販ビジネスのアマゾンは郊外に巨大な倉庫を作ることでそれを実現してしまいました。

また、動画サイトのNetflixも、ネット上なので、どんなに古い映画や人気のないドラマでも在庫としてつねにプールできるので、誰もが観ることを可能にしています。

女性アイドルグループも、新メンバーの注入や入れ替えでこれに類似させることで、ファンの命脈を保っているともいえるわけです。

print
いま読まれてます

  • なぜ若者は「みんな同じ顔に見える」アイドルにドハマリするのか?推し活巨大市場の核心「グループ売り」の行動経済学
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け