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肥料値上げの利益は米国2社が独占。歪んだ肥料業界に価格決定権を持たぬ農家は苦悩

日本のテレビでも、ようやく値上げラッシュの問題を取り上げるようになりました。しかし、まだまったく報道されていないのが米国農家の実状についてです。米国では肥料業界が2社に独占されており、肥料価格の上昇が止まらず、米国農家も限界を迎えているのです。(『いつも感謝している高年の独り言(有料版)』)

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※本記事は、『いつも感謝している高年の独り言(有料版)』2022年6月9日号の抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。

値上げラッシュに苦しむ米国農家

やっと日本のTV報道でも今回の物価上昇は今迄とは全く異なる事に気が付いたようです。しかし、その視野は近視眼的で、今、眼前で起きている値上げラッシュの報道です。

もう少し遠方まで見て欲しいと思います。米国の報道を翻訳してご紹介します。

米国の農家を苦しめているのは間違いなく物価上昇。ガソリンは過去二週間 毎日の如く上がっているし、肥料は昨年同月比で60%上がっている。

ミシガン州農業組合のエコノミスト、Loren Koeman氏は「米国の平均的なトウモロコシ、大豆農家の耕作面積は2,500エーカー(約10km㎡)。その肥料コストは昨年から17万5,000(約2,300万円)増えている。(25万ドル → 42万5,000ドル)」と述べている。

肥料コスト上昇は、トウモロコシ、大豆等の飼料高騰となり、そして食肉類、乳製品等の価格上昇につながる。

Koeman氏によれば、肥料コストの価格上昇の要因は、ウクライナ侵攻でロシア、ベラルーシからの肥料が輸入禁止になった事。特に天然ガスから生産される窒素肥料の高騰。

船舶用燃料、人件費の高騰だけでなく、船舶、鉄道輸送網の混乱も大きな問題。肥料は容積を取る貨物で、原産地から消費地への運搬距離は長いからだ。

出典:Spiking Fertilizer Costs Squeeze Midwest Farmers(2022年5月30日配信)

2社に独占されている米国肥料業界

また、肥料業界は、ほぼ独占産業となっており、米国では カリ肥料の90%がたった2社に独占されている。独占している肥料メーカーの価格支配権は強く、農家は その提示価格を拒否できないのだ。これにより、企業は史上最高の利益を出している。Nutrien社の最新の年度利益は2020年度利益のほぼ10倍になっている。

また、数少ない国内メーカーを守るという大義名分で高い輸入関税を掛けている政府の姿勢も問題なのだ。つまり国内メーカーは、海外の供給先と価格競争をせずに利益を確保しているからだ。

既に農家の多くは、GPS等を利用して、耕作地の土壌の質的区画化を行い、その土壌に会わせて最適な肥料配分を割り出し、効果的な使用をしている。
 
そのため、これ以上 使用量を抑える事はできないという。

出典:同上

肥料価格指数を見ると、2017年5月は69でした。2022年5月現在は255と5年間で約3.7倍です。2021年5月は106だったので、1年で約2.4倍になっています。上述の記事では1.6倍になったと記載されていますが、購入時期の違いもあると思います。

Next: 戦争が終わっても肥料価格は下がらないという農家の不安

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