短期投資と長期投資、どちらが儲かるでしょうか?これは投資を始めようと考えている方にとっては重要なテーマだと思います。絶対的な答えは無く、最終的にはご自身で決めていただくことになりますが、どちらかを選ぶためのヒントになればと思います。(『 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 』栫井駿介)
株式投資アドバイザー、証券アナリスト。1986年、鹿児島県生まれ。県立鶴丸高校、東京大学経済学部卒業。大手証券会社にて投資銀行業務に従事した後、2016年に独立しつばめ投資顧問設立。2011年、証券アナリスト第2次レベル試験合格。2015年、大前研一氏が主宰するBOND-BBTプログラムにてMBA取得。
短期投資と長期投資の違い
短期投資と長期投資、どちらが儲かるでしょうか。
実は手っ取り早く儲けたいなら短期が良いと言えます。
例えば、1年で成果を出したいと考えるならば、長期投資は適していません。
ただし、物事には二面性があり、短期投資にも難しい点はあります。
長期投資とは具体的に何年のことかという質問をよくされますが、私は「最低でも5年」としています。
これも明確な基準があるわけではないのですが、少なくとも5年くらいしないと長期投資の成果は分からないということです。
実は、短期投資と長期投資の違いは、「期間」の違いではなく、「見ているもの」の違いなのです。
この見ているものの違いによって結果的に期間に違いが出てくるということです。
<見るものの違い>
短期投資は何を見るかというと、「株価」です。
株価がどう動いてきて、これからどう動くのかを考えます。
一方で長期投資で見るものは「会社」です。
資本主義の原則に基づいた考え方で、会社が利益を生んでいるからこそその株式に価値があるという考えのもと投資するのが長期投資です。
それぞれが見ているものの背景にあるものは何でしょうか。
株価を動かすものは、端的に言うと人間心理です。
具体的には、株を売りたい人がいくらで売りたいかと、買いたい人がいくらで買いたいかという気持ちが合致すると、その時点で株価が形成されます。
ただし、これはすべての人が同意しているわけではなく、売りたい人や買いたい人の状況や必要性によって株価が決まってきます。
よって、取引する人たちの気持ちが読めないと目先の株価の動きを読むことはできません。
その人間心理を読むためには、日々のニュースをチェックしたり、それによって他の投資家がどう動くかを考えなければなりません。
また、現在ではAIの動きも考えなければなりません。
一方で、長期投資は企業価値がどれくらいかを考えます。
企業価値とは、企業が将来にわたってどれだけの利益を出していくのかということです。
その企業がこれからどれくらいの利益をあげて、どれくらいの配当を将来もたらしてくれるかということを考えます。
そのためには、企業の業績、事業内容、商品、競合他者などを総合的に見ながら将来の利益を予測する必要があります。
短期投資の「株価を見る」というのは分かりやすいと思いますが、長期投資の「価値を見る」ということについては少し分かりにくいかもしれません。
これを説明する言葉で、「短期的には美人投票、長期的には重量計」というものがあります。
美人投票というのはケインズが使った言葉で、美人投票においては、その人が美人かどうかということよりも、人々が誰に投票するかということを考えなければならないということです。
しかし、この”美人かどうか”という部分がだんだん数字に表れてくることになります。
株式で言うと、PERなどのことです。
そして、企業の利益が増えると、PER等の計算によって株価も上がっていき、株価と業績が似通ってくることになります。
そういう意味で、長期的には重さがそのまま数字に表れる「重量計」であるということになります。
これは私がよく使用する、株価の説明力と時間のグラフです。
20ヶ月くらいまでは、株価を決定づける要因として、金利が少し大きくなっているものの、大部分は「不明」となっています。
しかし、時間が経過するとともに「企業収益」つまり「業績」による部分が大きくなり、10年経つ頃には株価の約60%は業績によって決まるということになります。
これくらいの長い期間で考えるなら、業績を見ておけばよい言えます。