小林製薬は悪い企業ではない
私が行政の思惑を勘繰ってしまう理由は、企業分析をする中で小林製薬が悪い企業には見えないからです。
小林製薬は、「のどぬ~るスプレー」や「熱さまシート」など、非常になじみ深い商品を多く販売しています。
どういった分野においても、その分野のトップがいて、大手には弱小企業はなかなか太刀打ちできないのですが、小林製薬は的を小さくすることで“勝てる領域”を見つけてきました。
例えば、「風邪」の薬の場合、風邪薬だと大手に勝てないので、「のどぬ~るスプレー」ということでのどの痛みに特化した商品を作りました。
狭い分野に特化することによって、その分野でトップを取ることによって高い利益率を生み出そうという、“小さな池の大きな魚戦略”です。
当然、小さな池なのでどんどん新しい商品を生み出していかないと会社として成長するのは難しく、小林製薬としては新しいアイデアを生み出していかなければならないということになります。
これが、会社のキャッチコピーの『あったらいいなをカタチにする』につながります。
業績を見ると、基本的に横ばいですがある時急に伸びたりしています。
要因はいろいろありますが、一つはヒット商品が生まれた時に大きく業績が伸びることになります。
足元では横ばいの業績が続いているように見えますが、ここから新たなヒット商品が生まれればまた伸びる可能性があると思います。
ヒット商品を生み出す原動力となるのが“人材”です。
いかにして優秀で意欲を持った人材を集めるかということが小林製薬が今後も成長していけるかどうかの肝になります。
転職サイト「OpenWork」にはその企業に在籍していた(している)人の評価が掲載されているのですが、小林製薬の評価は3.73となっていて、これはOpenWorkに掲載されている企業の上位2%に入るということです。
つまり、社員から愛されている会社だということが読み取れるわけです。
また、小林製薬は同族経営となっていて、基本的には社長が全て最終決裁となるといいますが、社長が責任感を持ってやり遂げるという意味では同族経営だからこそ為せることだとも言えます。
今回の紅麹コレステヘルプの問題においても、社長が矢面に立って対応している点は評価ができると思います。
今、小林製薬は海外にどんどん進出しています。
特に台湾や中国で小林製薬の商品は人気があります。
日本の消費財メーカーが東アジアや東南アジアに進出することは一つの勝ちパターンとなっていて、小林製薬もそれを行っていることは前向きに捉えられる戦略です。
実際に、少しずつではありますが、海外売上比率も伸びてきています。
株価を見てみると、小林製薬はコロナ禍で調子が良かった企業です。
業績がそこまで伸びているわけではないのでそこから落ちて、今回の問題を受けてまた落ちています。
しかし、問題が発覚した直後こそ株価は下落しましたが、そこから上がって、大きく落ちることなくきています。
業績予想を取り下げたので、PERは表示されませんが、過去の業績から算出すると今のPERは約19倍となり、決して低くはない水準です。
これほど問題があったにもかかわらず株価がそこまで下がっていないのは、小林製薬に対する信頼がかなりあるのではないかと思われます。
世の中の風当たりは強いですが、株式市場は小林製薬を理解しているように感じます。
投資家に求められる視点
企業というものは、基本的にはがんばって良い商品を作ったり、配当や業績の向上によって株主に還元しようと考えているものです。
問題が起こった時に、悪いことをしようとしたわけではないのであれば、努力を見てあげたいと思います。
企業を、“がんばっている主体”として見守ることが、私たち投資家に求められる視点なのではないかと思います。
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『
バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問
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』(2024年7月14日号)より
※記事タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による
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【毎日少し賢くなる投資情報】長期投資の王道であるバリュー株投資家の視点から、ニュースの解説や銘柄分析、投資情報を発信します。<筆者紹介>栫井駿介(かこいしゅんすけ)。東京大学経済学部卒業、海外MBA修了。大手証券会社に勤務した後、つばめ投資顧問を設立。