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3大商社で一人勝ち「伊藤忠」は買い?三菱商事・三井物産よりも株価が堅調な理由とは=栫井駿介

伊藤忠商事の株価が堅調なワケ

足元で、世界の景気動向に対する懸念が高まっています。景気動向は、資源価格や為替水準に大きな影響を与えます。

このような状況下、三菱商事や三井物産など、伝統的に資源・エネルギー分野に強みを持つ総合商社は、業績の変動リスクにさらされやすい構造にあります。両社は鉄鉱石や石油・ガス開発事業などで高い収益を上げてきましたが、同時にこれらの事業は外部環境の変化に大きく影響を受ける傾向があります。

一方、伊藤忠商事は他の大手商社と比較して、非資源分野、特に消費者に近い川下ビジネスに強みを持っています。これらの事業は、資源価格の変動や為替の影響を直接受けにくく、また景気後退時でも需要の急激な落ち込みが比較的少ないという特徴があります。

このような事業構造の違いが、現在の不確実な経済環境下で投資家の評価に影響を与えていると考えられます。資源価格の下落や円高への懸念、さらには世界的な景気後退のリスクが高まる中で、伊藤忠商事の非資源分野に重点を置いた事業ポートフォリオは、相対的に安定した収益が期待できるものとして評価されています。

結果として、伊藤忠商事の株価は他の大手商社と比較して堅調な推移を示しています。非資源分野への注力が、現在の株価の相対的な強さにつながっていると言えるでしょう。

伊藤忠商事の課題

伊藤忠商事<8001>通期業績推移(SBI証券提供)

伊藤忠商事<8001>通期業績推移(SBI証券提供)

このように、伊藤忠商事の非資源分野への注力戦略は、確かに安定した収益をもたらしています。しかし、この戦略には課題も存在します。

非資源分野、特に消費者に近い川下ビジネスは、確かに景気変動や為替の影響を受けにくいものの、資源ビジネスのような爆発的な利益成長を期待することは難しい分野です。資源価格が上昇局面にある時、三菱商事や三井物産のような資源分野に強みを持つ商社は、大幅な増益を実現する可能性があります。

また、非資源分野は、商社が伝統的に強みとしてきた「グローバルネットワーク」を十分に活かしにくい分野でもあります。商社の強みは、世界中の情報と人脈を駆使して新たなビジネスチャンスを見出し、複雑な取引をまとめ上げる能力にあります。しかし、小売業や食品事業などの非資源分野では、このような商社固有の強みが発揮しづらい面があります。

さらに、伊藤忠商事のこれまでの業績拡大の多くは、子会社の業績取り込みによるものでした。ファミリーマートの完全子会社化や、他の主要子会社の持分比率引き上げにより、連結純利益を大きく伸ばしてきました。しかし、この戦略にも限界があります。主要子会社の取り込みが一段落した後は、新たな大型M&Aや事業投資を行わない限り、大幅な業績拡大は見込みにくくなります。

加えて、子会社の取り込みによる成長は、必ずしも伊藤忠商事自体の事業創造力や収益力の向上を意味するものではありません。むしろ、既存事業の利益を単に連結ベースで取り込んでいるに過ぎないという見方もできます。

このような観点から、伊藤忠商事の現在の好業績と株価の堅調さが今後も継続するかどうかは不透明です。今後は、新たな成長ドライバーの発掘や、商社としての強みを活かせる新規事業の開拓が求められるでしょう。

Next: 伊藤忠株は買い?長期投資家に必要な判断要素をプロが明言

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