fbpx

3大商社で一人勝ち「伊藤忠」は買い?三菱商事・三井物産よりも株価が堅調な理由とは=栫井駿介

日本の大手商社3社の株価動向に市場の注目が集まっています。過去6ヶ月の株価チャートを見ると、伊藤忠商事<8001>の株価が、三菱商事<8058>や三井物産<8031>を大きく上回る堅調な推移を示しています。特に7月以降8月初旬の急落局面でも他社より底堅さを見せ、その後の回復も顕著です。なぜ伊藤忠商事だけがこれほどの強さを見せているのか。非資源分野に強みを持つ同社の経営戦略と、投資家からの高い評価の背景に迫ります。(『 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 』栫井駿介)

【関連】ピークから20%下落「三菱商事」株は買い?本当に割安か?リスクと将来性を長期投資のプロが解説=栫井駿介

プロフィール:栫井駿介(かこいしゅんすけ)
株式投資アドバイザー、証券アナリスト。1986年、鹿児島県生まれ。県立鶴丸高校、東京大学経済学部卒業。大手証券会社にて投資銀行業務に従事した後、2016年に独立しつばめ投資顧問設立。2011年、証券アナリスト第2次レベル試験合格。2015年、大前研一氏が主宰するBOND-BBTプログラムにてMBA取得。

伊藤忠商事の特徴と強み

伊藤忠商事<8001>日足(SBI証券提供)

伊藤忠商事<8001>日足(SBI証券提供)

伊藤忠商事は、日本を代表する総合商社の一つで、幅広い事業領域で活動しています。同社の事業は主に8つのセグメントに分かれています。

  1. 繊維カンパニー: アパレル関連の原料調達から製品製造、ブランドビジネスまでを手掛けています。CONVERSEやHUNTING WORLD、LANVIN、Reebokなど多数の有名ブランドの日本における事業を展開しています。
  2. 機械カンパニー: 自動車、船舶、航空機、産業機械などの分野で事業を展開しています。特に北米での自動車ディーラー事業や、再生可能エネルギー事業に注力しています。
  3. 金属カンパニー: 鉄鉱石や石炭などの金属資源の開発・トレーディング、鉄鋼製品の流通などを行っています。オーストラリアでの鉄鉱石事業が主力です。
  4. エネルギー・化学品カンパニー: 原油・ガス開発、石油製品トレーディング、化学品製造・販売などを手掛けています。アゼルバイジャンでの原油開発プロジェクトや、LNG事業などが注目されています。
  5. 食料カンパニー: 食品原料の調達から、加工、製造、流通まで幅広く事業を展開しています。Doleブランドの青果物事業や、畜産関連事業が主力です。
  6. 住生活カンパニー: 建設・不動産、物流、保険など、生活に関わる様々な分野で事業を展開しています。北米での建材事業や、欧州でのタイヤ小売事業などが注目されています。
  7. 情報・金融カンパニー: IT関連サービス、ベンチャー投資、金融サービスなどを提供しています。特にITサービス事業を展開するCTC(伊藤忠テクノソリューションズ)が主力です。
  8. 第8カンパニー: 生活消費関連分野に特化し、新たな価値創造を目指しています。特にコンビニエンスストア大手のファミリーマートを中心とした事業展開が注目されています。

伊藤忠商事の最大の強みは、非資源分野、特に消費者に近い川下ビジネスに強く注力していることです。この戦略により、資源価格の変動に左右されにくい安定した収益基盤を構築しています。

具体的には、ファミリーマートを中心とした小売事業、Doleブランドを活用した食品事業、北米での自動車ディーラー事業などが主力となっています。これらの事業は、日常生活に密着しており、景気変動の影響を受けにくいという特徴があります。

伊藤忠商事の強みとして、リスク管理能力も挙げられます。多様な事業ポートフォリオを持つことで、特定の分野や地域のリスクを分散させています。また、財務健全性を重視し、投資と財務のバランスを慎重に管理しています。

グローバルなネットワークも伊藤忠商事の強みです。世界各地に拠点を持ち、地域に根ざした情報収集と事業展開を行っています。特に、CITICとの提携による中国市場へのアクセスは、他社との差別化要因となっています。

伊藤忠商事は「非資源」No.1の商社

伊藤忠商事、三菱商事、三井物産は、日本を代表する総合商社ですが、その事業戦略と強みには明確な違いが見られます。

伊藤忠商事の最大の特徴は、非資源分野、特に消費者に近い川下ビジネスに強みを持つ点です。

三井物産は、資源・エネルギー分野で特に強みを持っています。鉄鉱石や石油・ガス開発などの資源事業が同社の収益の大きな柱となっています。特に、オーストラリアやブラジルでの鉄鉱石事業は世界有数の規模を誇ります。一方で、「強い」資源ビジネスと「厚み」のある非資源ビジネスのバランスも重視しており、ヘルスケアやニュートリション、モビリティなどの新分野への投資も積極的に行っています。事業投資を通じた付加価値創造に力を入れ、投資先の経営に深く関与する姿勢が特徴的です。

三菱商事は、エネルギーと非資源分野でバランスの取れた事業展開を行っているのが特徴です。天然ガスを中心としたエネルギー事業は重要な位置を占めていますが、自動車関連事業や食品流通事業など、非資源分野での展開も幅広く行っています。近年は、電力事業やデジタル技術を活用した新規事業開発にも注力しており、総合的な事業ポートフォリオの構築を目指しています。

このように、伊藤忠商事が消費者に近い非資源分野に注力し、三井物産が強い資源ビジネスを基盤としつつ新分野にも積極投資、三菱商事がエネルギーと非資源のバランスを重視という形で、各社の戦略の違いが明確に現れています。

Next: 伊藤忠の株価が堅調な理由とは?好業績は続いていくのか?

1 2 3
いま読まれてます

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

MONEY VOICEの最新情報をお届けします。

この記事が気に入ったらXでMONEY VOICEをフォロー