三菱商事<8058>の株価が軟調となっています。2023年前半には資源価格の上昇や円安を背景に急激な上昇を示し、5月には過去最高値となる3,775円を記録しました。しかし、その後は調整局面に入り、徐々に下落傾向を示しています。その後、やや持ち直す動きを見せているものの、依然として3,000円前後でもみ合う展開が続いています。
現在の株価水準は、ピーク時と比較すると約20%程度下落した水準にあり、投資家の間では割安感が出てきているとの見方も出始めています。果たして三菱商事は買い時なのでしょうか?「そもそも三菱商事とはどのような企業か?」ということ含めて解説してまいります。(『 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 』栫井駿介)
プロフィール:栫井駿介(かこいしゅんすけ)
株式投資アドバイザー、証券アナリスト。1986年、鹿児島県生まれ。県立鶴丸高校、東京大学経済学部卒業。大手証券会社にて投資銀行業務に従事した後、2016年に独立しつばめ投資顧問設立。2011年、証券アナリスト第2次レベル試験合格。2015年、大前研一氏が主宰するBOND-BBTプログラムにてMBA取得。
三菱商事のビジネスモデル
三菱商事は総合商社ですが、単なる仲介業にとどまらず、各事業分野に深く関与し価値創造に携わっています。
戦略的投資と事業経営
三菱商事は多くの事業会社に出資し、主要株主や筆頭株主として経営に参画しています。
- LNG事業では複数のプロジェクトに出資・参画
- 自動車関連では三菱モーターズやいすゞ自動車の販売会社に出資
- 食品分野ではCermaq(水産養殖)やPrinces(食品製造)を完全子会社化
バリューチェーン全体の最適化
原料調達から生産、物流、販売まで一貫したバリューチェーンを構築・管理しています。
- 金属資源事業では鉱山権益取得、生産、輸送、販売まで一貫して関与
- 食品事業では原料調達、製造、流通、小売りまで幅広く展開
グローバルネットワークの活用
世界中の拠点網を活かし、各事業の国際展開や新規市場開拓を支援しています。
総合力を活かしたソリューション提供
複数の事業分野の知見を組み合わせ、顧客企業や事業パートナーに包括的なソリューションを提供しています。
新規事業開発
社会課題や技術革新を捉え、新たな事業機会を発掘・育成しています。特に近年はEX(エネルギー変革)やDX(デジタル変革)分野に注力しています。
このように、三菱商事は単なる仲介者ではなく、事業投資家、戦略パートナー、バリューチェーン・オーガナイザーとして各事業に深く関与し、価値創造を行っています。直接のオペレーションは子会社や関連会社が担うケースが多いですが、三菱商事本体も戦略立案や重要な意思決定、リソース配分などで中核的な役割を果たしています。
事業の構成割合は以下の通りとなり、「金属資源」や「天然ガス」といった資源分野の貢献度が大きいことがわかります。
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