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株価ピークから8割下落「エムスリー」どこで間違えた?3つの大失敗を長期投資家はどう判断すべきか=栫井駿介

しくじりその3「事業を広げすぎ?」

この3つ目に挙げたしくじりが、エムスリーの株価が上がらない最大の要因なのではないかと考えています。

大きく成長してきた企業を見れば見るほど、1つのコアの部分に集中して事業を行っているように感じられます。

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出典:Think 180 around

世界最大の時価総額を誇るAppleはiPhoneとMacに割と集中していますし、MicrosoftもゲームなどもありますがやはりWindowsが中心です。
NVIDIAは半導体です。
Alphabet(Google)は検索が中心で、YouTubeなどもありますがそこまで大きく広げているわけではありません。
海外にも出ていますが、そこでもほぼ同じシステムを持って行っているに過ぎません。
Amazonも同様です。

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出典:日本経済新聞

日本についても、1位のトヨタは自動車を作り続けていますし、2位の三菱UFJは銀行です。
3位の日立は、これまでは広げすぎていて、身の回りのあらゆる家電から、電車やエレベータ―などものすごく大きいものまで作っていましたが、今は逆にエレベーターなどの重電に集中しています。
ソニーも家電やパソコンから撤退して集中して株価が上がってきました。

 

必ずというわけではありませんが、やはり大きく成長している企業を見ると、1つのコアなところに集中的に投資を続けてきて、だからこそ高い収益性と他の企業に負けない力を身に着けてきています。

 

エムスリーを見てみると、MR君やm3.com、それに付随するキャリアや治験の分野くらいまでだったらよかったかもしれませんが、それをいろいろな国でやっていて、しかもそれが同じモデルというわけではなく、買収した企業がたまたまやっていた事業をやっているというビジネスがあったりして、必ずしもコアの部分に力を注げている状況ではないのではないかと思います。

開示資料からも選択と集中ができている様子が見えず、機関投資家としても懸念を抱いてしまうわけです。

 

そんな中でとにかく厳しいのが国内の状況です。

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出典:エムスリー 2024年10月会社説明資料

これまで絶好調だったMR君や国内プラットフォーム事業が、いまやマイナスになってしまっています。
一番強いとされている部分がここまでのマイナスになるということは、かなり深刻な状況なのではないかと捉えてしまいます。
もちろんコロナの反動減もあるとは思いますが、片やわき目を振っている状況で主力がこの有様だと、本当に分かっているのかと思ってしまいます。

 

ドラッガーの言葉を借りるなら、経営はマーケティングとイノベーションです。
まずはコアとするお客さんのニーズをしっかり捉え(マーケティング)、役に立つ商品を提供する(イノベーション)というサイクルを延々と行うということが経営のミソですが、エムスリーに関しては広げる方にばかり注力しています。
これまでの成長はM&Aによって成し遂げられてきた部分もありますが、コングロマリット化すればするほど経営は難しくなり、その難しさが今のPERが上がらない一つの理由になっていると思います。

私の師匠でもある大前研一さんは「屏風と経営は股を開くと倒れる」と言いますが、エムスリーは今まさに股を開きすぎている状態と言えます。

反省せよ

決算資料を見ると、コロナで行き過ぎただけというような言い訳のオンパレードのように見えます。
実際にその通りなので理解できるところではありますが、これまで間違ったところはなかったのかしっかりと振り返ってほしいと思います。
そうしないと株価のマイナスの動きはなかなか止められないと思います。

CEOの谷村さんが出てくる機会が少なく、どう考えているのか分からないので、もっと積極的に発信してほしいところです。


(※編注:今回の記事は動画でも解説されています。ご興味をお持ちの方は、ぜひチャンネル登録してほかの解説動画もご視聴ください。)


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image by:metamorworks / Shutterstock.com
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バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 』(2024年11月10日号)より※記事タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による

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【毎日少し賢くなる投資情報】長期投資の王道であるバリュー株投資家の視点から、ニュースの解説や銘柄分析、投資情報を発信します。<筆者紹介>栫井駿介(かこいしゅんすけ)。東京大学経済学部卒業、海外MBA修了。大手証券会社に勤務した後、つばめ投資顧問を設立。

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