何が悪かったのか
これほど素晴らしい企業であるエムスリーがなぜこのような株価の推移となってしまったのかという“しくじり”を見ていきたいと思います。

エムスリー<2413> 月足(SBI証券提供)
しくじりその1「株価が高すぎ」
株価が大きく上がる前でもPER50倍あり、株価がまだ上がりきっていない2020年4月の時点でPER120倍、その後はコロナの影響で業績予想を開示していなかったのですが、実質的には150倍くらいあったのではないかと思われます。
投資家の皆さんにまず抑えていただきたいことは、どんなに素晴らしい成長企業であろうともPER100倍を超えるものはなかなか実現できるものではないということです。
もしかしたら30年後にはPER100倍に見合う業績を出す可能性はありますが、PER100倍もあったらその後少しでも悪材料が出ようものならさすがに株価は下がります。
PER100倍になったところから短期的に伸びていくことは期待しない方が良いと思います。
Amazonも2000年頃のITバブルの時には実質的にはPER100倍くらいあって、そこから20年かけてその期待に見合う業績を出して成長していますが、それでも一時は大きく株価を下げました。
PER100倍というところに参入することはおすすめできませんし、もし持っている場合でも、全部とはいかずとも一部は利益確定しておいた方が良いのではないかという数字です。
特に機関投資家は、上がるうちは持っておきたいものの少しでも悪材料が出た時には利益確定したいということで、常に下落圧力がかかっている状態と思っておくべきでしょう。
ファンダメンタルズの好調と株式投資ブームの両方に巻き込まれて株価が大きく下がってきたということです。
しくじりその2「期待させすぎ」
エムスリーは、確かにコロナの影響で業績が上がってはいるけれども、コロナ特需というだけでなく、様々な医療関係事業を取り込んできたし、海外にも進出していて、この成長はある意味当然であり、今後もまだまだ成長できると言っていました。
事業を組み合わせれば無限に広がっていくことや、国や事業タイプを増やしてその掛け算で伸びていくという風に期待させていたところがありました。
M&Aもどんどんやっていくとなっていました。
ここで「株価は過熱気味である」と言えていれば、今のようにしんどい状況にはなっていなかったかもしれません。
企業は株価を上げることも大事ですが、上げすぎると高値で掴んでしまう投資家を生んでしまうこともあり、適正な期待をさせることも必要なのではないかと思います。
今になって、コロナ禍では下駄をはいた状態だったということを言っていますが、当時の段階で説明するべきだったのではないかと思います。
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