NTTの衰退分野
先ほどは、成長している分野についてみていきました。
ここでは、逆に足を引っ張っている衰退分野について解説します。
<固定電話>
減益の要因としては、固定電話が挙げられます。
いまの時代、個人で固定電話を使う人がほとんどいなくなっています。
ですが、固定電話はインフラとして維持していかなければなりません。
このように、売上は減っているにもかかわらず維持コストがかかってしまうことが衰退の要因としてあります。
<携帯電話>
固定電話だけではなくて、携帯電話の方も様子が変わってきています。
携帯電話は、ここ20年ぐらい大きく成長してきました。
いまでは、1人1台持つようになり新規顧客が増える状況ではないといえます。
そこで登場したのが、格安プランです。
auでいうならpovo、ソフトバンクだとLINEMOなどがでてきて低価格競争が進むようになりました。
基本的に、市場が伸びているうちは商品やサービスを供給することに集中するので売上の上昇が続きます。
しかしながら、商品が行きわたってくると今度は残った企業たちで価格競争が起きるためARPU(契約者1人当たり収益)が低下しています。

この画像がドコモの直近の決算ですが、ARPU(契約者1人当たり収益)が縮小していることがわかりますね。
1人当たりの収益が減ってなおかつ契約数も伸びないとなると、売上は少なくなります。
その結果、携帯通信の売上は減少してしまっています。

それでも顧客獲得競争は続きますので、販売促進費用は増えてしまい携帯通信事業は減益となり苦しい状況です。
NTTをPPMで分析してみる
ここまで紹介した成長分野と衰退分野を、PPMでまとめてみます。
PPMとは、プロダクト・ポートフォリオ・マネジメントの略で「スター」「金のなる木」「問題児」「負け犬」の4象限に振り分けて企業を分析するものです。
<NTTをPPMでまとめる>

成長率やシェアが高い成長企業が「スター」と呼ばれています。
- スマートライフ事業
- データセンター事業
- 法人向けDX・クラウドソリューション
これらの事業は成長エンジンとして、これから先に期待できる分野です。
「金のなる木」は市場自体の成長性は低いが、シェアが高く利益をまだ生み出せるものです。
- 個人向け携帯事業
- 固定通信事業
- B2B向け通信サービス
個人向け携帯事業や固定通信インターネットは成長しなくなったとはいえ、安定した契約があるのでコストを抑えて利益を出し続けられることが期待できます。
「問題児」はシェアが低いけれど、将来的に成長する可能性があるものです。
- IOWN構想
- 法人向けAI・データ解析ソリューション
IOWN構想は現状では、今後上手くいくのかまだわかりません。
「負け犬」はシェアが低く、市場も伸びないので撤退すべき事業です。
- 地域通信事業
- レガシーITシステム
地域通信事業は固定電話を使う人は減る一方ですが、維持コストがかかるため衰退事業だといえます。
<PPMで見えてくるNTTの成長が難しい理由>
PPMは、負け犬となっている事業を明確にして撤退する目的で作られたものです。
本来なら、負け犬である地域通信事業などからは撤退すべきです。
ですが、NTTは元々国の事業としてはじまったことからNTT法に縛られていて簡単に事業撤退ができません。
NTT法とは、ユニバーサルサービスとして固定電話サービスを提供し続けなければならない
決まりがあります。
そのため、負け犬であるとわかっていながらも地域通信事業を続けなければなりません。
NTTに投資する人は、このように成長を引き下げてしまう状況があることについて頭に入れておくとよさそうです。
実際は、インターネット回線を利用するIP電話のシステムでも電話はできます。
ですが、NTT法があるため従来の固定電話も残さなければなりません。
そこでNTTはNTT法の廃止を2025年国会で通したかったようですが、うまくいっていないようです。
その点でも、期待感を下げている部分があるかもしれません。
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