■売れるネット広告社グループ<9235>の成長戦略
1. 成長戦略
EC市場のなかでも同社の属する物販系消費者向けEC市場は成長を継続、EC広告市場も国内外で拡大を続けている。特に同社の顧客が多い健康食品市場や化粧品市場、越境EC市場の成長は着実といえる。加えて、コロナ禍後は、アウトバウンド旅行者や修学旅行が回復してきた。M&A市場も、300万社以上あると言われる中小企業で、事業承継型のM&Aが高水準のまま緩やかに増加を続けている。このような追い風を受け、同社は「世界中をダイレクトマーケティングだらけにする!」「世界最大のツーリストプラットフォーマー企業になる!」というビジョンの実現に向け、「既存事業の成長」「M&A事業による成長」「新規事業による成長」を成長エンジンに、2028年7月期にグループ売上高100億円を達成する「Ureru100」を目標に掲げている。
事業別の成長戦略としては、「世界中をダイレクトマーケティングだらけにする!」というビジョンのD2C(ネット通販)向けデジタルマーケティング支援事業では、国内ダイレクトマーケティング事業において、新規クライアント数、長期継続クライアント数、クライアント単価の増加を目指している。新規クライアントは、セミナーやインターネット広告に加え、新商品・サービスや領域の拡大をテコにクライアント同士やグループ会社間の紹介を増やしていく計画である。長期継続クライアントに対しては、「売れるD2Cつくーる」に自動生成AIや決済システムなどを導入して利便性を高める。クライアント単価は、新商品・サービスによりクロスセルを増やすことで引き上げる方針である。さらに、体制を強化して保険や人材、不動産、金融など新領域の事業開発にも注力する。
越境EC事業においては、市場が厚く日本ブームの中国と米国に特化し、A/Bテストを繰り返してノウハウの確立を図る。米国では、フルフィルメントを外部委託してモール出店や広告運用を支援する。中国では、2024年に(株)アクセスブライトから事業譲受した倉庫や人材、2025年にアドウェイズ<2489>から株式取得して子会社化したデジタルマーケティング会社「ADWAYS CHINA Co., Ltd」といったインフラをベースに、中国におけるフルフィルメントやSNS運営代行、インフルエンサーの手配、TikTokライブコマースなど越境ECノウハウを積み上げ、マーケティング支援サービスをワンストップで提供する。また、日本企業で初めて中国「小紅書(RED)」に百貨店タイプのストアページも開設した。
グローバル情報通信事業では、「世界最大のツーリストプラットフォーマー企業になる!」というビジョンに向けて、旅行者の課題を解決するサービス体制をグループ全体で構築する考えである。まずはJCNTの「Transfone」で、通信における課題を解決するサービスを拡充する。現在、収益安定化に向けて強化している海外出張者や修学旅行生向けのサービスに加え、大きな成長が見込まれるインバウンド旅行者や国際旅行者(外国人の国外旅行)もターゲットにするため、新たな組織を設置してサービスを拡大する計画である。将来的には、「言語」「移動」「宿泊」など様々な課題を解決できるサービスの展開を目指す。
D2C(ネット通販)事業では、オルクスの化粧品D2C事業のマーケティング戦略を強化する。具体的には、既存商品の販売拡大に加えて、ソーシャルEC戦略チームにより、「KogaO+」や「VITA JAM」のようなマーケットインの考え方に基づく新規商品の開発を継続的に進める計画である。また、(株)売れる越境EC社と連携して、米国や中国など海外向けの販路も強化する。
ビジュアルコミュニケーションDX・WEB3事業では、SOBAプロジェクトのSaaSサービスと、既存の「コンサル×運用」モデルを融合することでストック型ビジネスのシェアを高め、事業領域の飛躍的拡大と持続可能な成長基盤の確立を目指す。具体的には、SOBAプロジェクトの通信・映像技術とTikTok Shop運用で培われた動画クリエイティブ・マーケティング運用力を掛け合わせ、ライブコマースの最適化プロダクトを独自開発するなど、SaaS型プロダクトラインを強化する。WEB3の分散型構造を生かし、顧客一人ひとりにパーソナライズされたショッピング体験を提供するため、「AIエージェント」の時代に即した、消費者の購買を自律的に代行し決済の安全性も担保された次世代コマースプラットフォームを構築する。また、SOBAプロジェクトによる教育・医療・行政向け遠隔支援実績を生かし、教育・医療・Web会議市場など既存事業を補完する市場に参入してポートフォリオの多様化を推進する。
2. M&A戦略
成長エンジンのなかでも同社はM&Aを軸に考えており、2027年7月末までに10社程度の子会社化を計画している。M&Aの規模感は、前年のグループ売上高と同規模程度の売上高のM&Aを実行する「戦略的同規模M&A」という考え方に基づいている。M&Aを実行する際は、リスク回避のためデューデリジェンスにはもちろん細心の注意を払うが、ダイレクトマーケティングの分野の「売れる20の領域」でクロスセルできることを条件としているため、M&Aの数や規模感にかかわらずリスクを最小化できると考えられる。M&Aの資金調達については、営業キャッシュ・フローに加えてデッドファイナンスやエクイティファイナンスも計画している。前期比20%~30%増の「既存事業の成長」を前提にこうしたM&Aを積み上げると、2028年7月期には売上高が「Ureru100」を超える120億円~140億円となる見込みである。現状は、M&Aによる売上成長を第一目標に、生産性向上によってのれん負けしない利益体質を構築し、なるべく短期的な損失を抑える方針である。「Ureru100」達成後には、営業利益率を引き上げていく考えである。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田 仁光)
いま読まれてます
記事提供: 
元記事を読む