今回は株主優待が人気のヤマダホールディングス<9831>を取り上げます。国内最大の家電量販店であるヤマダホールディングス(以下、ヤマダHD)は、人気のある投資先です。24年8月2日時点の株価は約436円と単価が安いことに加え、LABIやヤマダデンキなどで使える株主優待券が魅力です。配当と株主優待の還元率を合計した総還元利回りは約6.5%です(100株保有した場合、配当利回り2.98%、優待利回り3.44%)。この還元に期待して投資して良いのかを理解するために、事業の中身に問題はないのか、徹底解説していきます。(『 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 』佐々木悠)
プロフィール:佐々木悠(ささき はるか)
1996年、宮城県生まれ。東北学院高校、東京理科大学経営学部卒業。協同組織金融機関へ入社後、1級ファイナンシャル・プランニング技能士を取得。前職では投資信託を用いた資産形成提案や多重債務者への債務整理業務に従事。2022年につばめ投資顧問へ入社。
ヤマダHD の立ち位置
まずはヤマダHDの業界内のポジションを確認します。店舗数を見てみましょう。
出典:各社IR資料等より作成
24年8月1日現在確認できる店舗数は、首位はエディオンの1202店舗。ヤマダHDは二番手ですから業界トップクラスと言えるでしょう。
競合と売上を比較してみましょう。
出典:SPEEDAより作成
ヤマダHDの売上は競合他社と大きく差をつけています。競合各社の売上が7,000〜8,000億円前後ですが、ヤマダHDは1兆5,000億円以上で推移しています。ただし、どこの企業も大きく業績を伸ばしている訳ではなく、ほぼ横ばいで推移しています。
そして、店舗あたり売上を比べるとヨドバシカメラが圧倒的です。ヨドバシカメラECを活用したヨドバシドットコムの活用が成功していますし、ヨドバシの出店数は極端に少ないことが関係していると言えるでしょう。
出典:各社IR資料等より作成
一方で、ヤマダは大規模店舗もありながらも地域密着・小規模店舗も多いのです。
したがって、ヤマダHDの業界内の位置付けは、売上の規模は圧倒的、かつ住民の近くにある地域密着型の出店戦略が特徴と言えます。
次は、ヤマダHDの業績を見ていきましょう
外部環境の変化で業績が大きく変動
まずは売上と営業利益の推移です。
出典:マネックス証券
長い目線で見ると、現在は決して好調とは言えないことがわかります。2011年の売上高2兆1,532億円、営業利益1,227億円が過去最高です。
この時は、アナログ放送終了によるテレビの買い換え需要があったことに加え、政府による家電エコポイント事業(省エネ家電を政府負担で安く買えた)によって業績が拡大しました。この2つが重なり、省エネ家電や地デジ対応テレビが飛ぶように売れた訳ですが、その特需は長くは続きません。結果的には需要の先食いになってしまい、それ以降業績が下降しています。
2015年には消費増税の影響で営業利益が200億まで減少しました。
一方で、2020年以降のコロナ禍ではテレワークやオンライン授業に関する商品サービスが好調だったため、利益を伸ばしました。
しかし、その需要が剥落した現在は、売上1兆5,000億円、営業利益400億円前後で落ち着いているように見えます。
過去の業績の変動要因を見ると、政府のポイント事業や増税、地上アナログの終了など外部環境の変動が大きな影響を与えていることがわかります。
さらに海外進出が進んでいないため、国内の人口減少や少子高齢化の影響も無視できません。したがって、ヤマダHDは家電業界のトップですが、市場環境自体は外部環境の影響を受けやすいことと、緩やかな市場縮小が起きていることから、難しい事業環境にあるのです。
ヤマダはこの事業環境にどう対応していくのでしょうか?