今回はAGC<5201>を分析します。広瀬すずさんのCMでおなじみのAGC、株価は21年から4,500〜6,000円の間で推移しています。24年7月現在のPBRは0.7倍、配当利回りは4.0%とお買い得な水準に見えます。今回はAGCの現状を分析し、投資して良いのか考えていきます。(『 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 』佐々木悠)
プロフィール:佐々木悠(ささき はるか)
1996年、宮城県生まれ。東北学院高校、東京理科大学経営学部卒業。協同組織金融機関へ入社後、1級ファイナンシャル・プランニング技能士を取得。前職では投資信託を用いた資産形成提案や多重債務者への債務整理業務に従事。2022年につばめ投資顧問へ入社。
AGCって何をしている会社?

AGC<5201>週足(SBI証券提供)
AGCは様々な事業を行っている会社です。大きく分けると5つに分かれています。
- 建築ガラス事業:創業事業であり、板ガラスや建築用加工ガラスなど建物の窓や壁に使用されるガラス製品の製造販売を行う
- オートモーティブ事業:自動車用ガラスおよび車載ディスプレイ用カバーガラスなどの製造販売を行う
- 電子事業:ディスプレイ用ガラス、半導体関連部材、プリント基板材料などの製造販売を行う
- 化学品事業:塩化ビニル原料、苛性ソーダなどの基礎科学品の製造販売を行う
- ライフサイエンス事業:医薬品および農薬のプロセス開発・製造受託を担うCDMO(Contract Development and Manufacturing Organization)事業
23年12月期の売上内訳はトップが化学品、その次にオートモーティブや建築ガラスが続きます。

出典:個人投資家向け説明資料
業績の推移は、2010年と2021年に利益が拡大したものの、近年はやや低調です。

AGC<5201>通期業績推移(SBI証券提供)
事業ごとの利益の推移を見てみましょう。

出典:個人投資家向け説明資料
2010年ごろは電子事業が好調でした。この頃はテレビがブラウン管から液晶ディスプレイに変換された時期であったことに加え、スマートフォンの普及も電子ディスプレイ事業の成長を後押ししました。しかし、その特需はすぐに縮小していきます。そして、2010年から2015年にかけて利益が約75%縮小した時に、ポートフォリオ転換をスタートしました。要は電子ディスプレイに代わる事業を見つける必要があったのです。
そして、近年は化学品事業の好調が業績を牽引していました。この背景には、主に東南アジアにおける基礎化学品(※)の市況高騰の影響で業績が拡大しました。2022年も化学品の市況高騰の影響が続いていましたが、2023年は中国の景気後退で、不動産需要が悪化しました。住宅建設に使われる基礎科学製品が、中国国内からアジア周辺諸国に輸出されることで市況を押し下げたことで利益が縮小したのです。
(※基礎化学品の主力事業はクロールアルカリ事業です。クロールアルカリとは、塩水を電気分解する過程で得られる一連の化学物質(塩素、水酸化ナトリウム、水素)を使ったビジネスであり、これら化学物質は水や家庭用洗剤、プラスチック、紙などの製造に使われます)
まとめると、AGCは様々な事業を行っていることが特徴です。時代に合わせて新規事業を創出し、利益を維持してきました。ちなみに、旧社名は旭硝子ですが、すでにガラス事業以外の電子や化学品の影響力も大きくなっていることから、AGC (アサヒガラスコーポレーション)と社名が変更されました。
次はこの様々な事業を展開していった原動力であり、AGCの最大の特徴である両利きの経営を説明します。両利きの経営とは何でしょうか?