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高配当利回り4.0%「AGC」は買い?リスクは?長期投資のプロが成長性を分析=佐々木悠

両利きの経営に強み

AGCの両利きの経営とは、「既存事業の強化と新規事業の創出を同時に追求する経営戦略」と言えます。右利きが既存事業を新規技術で強化することを目指し、左利きが既存事業とは異なる新規市場への参入というイメージです。

例えば、祖業の建築ガラスから自動車やブラウン管事業へ参入し、そこから電子ディスプレイや半導体製造装置の部品へと参入していきました。(左利きの例)

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出典:AGC 技術開発戦略

同時に、既存事業の競争力強化を行っていることから、AGC伝統的な事業(板ガラスや自動車用ガラス、基礎科学品分野など)では、高いシェアを誇るものが多いのです。(右利きの例)

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出典:個人投資家向け説明資料

この両利きの経営を行える理由は何でしょうか?私は技術や研究開発を促進する組織体制にあると考えています。

例えば、AGCは「技術ソムリエ」というベテラン技術者を配置し、様々なミーティングに参加して技術の組み合わせや新しいプロジェクトのアイデアを提供しています。顧客や研究者の悩みをヒアリングし、技術の組み合わせの発想や他の部署の技術を伝え、技術と技術(研究と研究)の橋渡し的な役割の人物がイノベーションを促進します。

さらに、大学や顧客などとの外部機関とのオープンイノベーションも特徴です。
例えば東京大学、東京工業大学、名古屋大学などと大型連携を進め、組織対組織の協力体制を構築しています。あるいは、NTTドコモと強力し、5Gや6Gなどの次世代通信規格に対応した、既存の窓ガラスの室内側から取り付けることができるアンテナを開発しました。

AGCは、社内の技術部門間の連携を強化し、外部パートナーとの協力体制を整えることで、柔軟な組織を実現しています。この「両利きの経営」アプローチが、今後の市場変化に対応しながら事業拡大を可能にする原動力になるでしょう。次は、AGCの事業のリスクを考えてみます。

リスクは市場変動、課題は資産効率

AGCのリスクは「市場変動のリスク」だと考えています。AGCが製造している製品は幅広い市場に進出しています。建築・建材業界、自動車業界、電子・ディスプレイ業界、化学品及び医薬・農業業界等の市場動向の影響を受けます。
古くはディスプレイ市場の急速な成長と縮小の波に晒され利益が大きく上下動しました。近年は、基礎化学品事業が中国の不動産市場の不況の影響を受けています。また、医薬品の受託生産を行うライフサイエンス事業では、コロナ禍による急成長と、その後の需要減少の両方で利益が大きく変動しています。

さらに、資産の効率化にも課題があります。特にディスプレイ事業は製造において巨大な設備を必要としながら、利益を稼げているわけではありません。さらに製造過程において温室効果ガスを排出することから環境負荷の課題もあります。

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出典:個人投資家向け説明資料

今後はこのディスプレイ事業をいかにテコ入れするかが大きなポイントになると考えます。具体的には低収益なサイズから大型ガラス基盤への集中にするために事業構造改革を行なっているようです。

Next: AGCの配当利回り4%に期待。投資するべき?

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